自閉症に対するサークル・キュア

~自閉症への生態系治療の要点~

私が今取り組んでいる自閉症の治療は、大きく分けると3段階になっています。
「治療」と言っても、私は医者ではありませんし、実際に完全に治すことなどできません。ただ基本となる考え方(方向性)を示しているだけです。あくまでも情報の提供であり、健康に過ごすためのアドバイスやヒント、提案ができればということです。実践にあたっては、各自、情報を集め、学び、ご自身でよく考えたうえで、専門医のアドバイスなどを受けながら慎重にお試しください。結果については自己責任でお願いいたします。

自然が破壊され、環境問題や健康被害が大きく取り上げられるようになって来た昨今、一部の先進的な農家さんの中では、「自然農法」に取り組み、健康な野菜作りをしようとされています。その方法は「生態系栽培」、アグロエコロジーという言葉が使われたりします。生命の法則、自然に寄り添う農業です。そして、その延長線上にある環境までも変えてゆこうとされています。リジェネラティブ農業(環境再生型農業)と言います。アメリカでも、実際その成果を上げつつあります。自然には、健康な元の状態に戻そうとする「再生力」があるのです。

人は自然の一部であると言われます。「自然」である以上、その根本的な原則は同じです。食生活や生命の循環、共生、自然に寄り添って生きること。生命のつながり「生態系」によって治療・再生されていくところがあるのではないかと推察します。だから、「生態系治療」という表現を使っています。

前置きはこのくらいにして、今回は要点のみを、箇条書きでお伝えいたします。各項目、掘り探ればいろんな書物、情報、考え方、人物と出会うことができるのではと思います。ここは入り口です。「自然」は人を生かし、地球を「生命の星」へとかえてゆきます。

① 栄養療法(食事療法)・・・食事を薬とする

自然を取り込んでゆく。空気・水・食べ物。
You are what you eat.」あなたは、あなたが食べた物でできている。
自然のものを食べる。好き嫌いをせずに、多種多様な食品を食べる。精製されていないもの、全体食を食べる。有機野菜をしっかり食べる。農薬や化学物質を含む食事は極力避ける。

食事は農業的行為である。食事を通して自然環境につながっている。(生態系の循環に参加する)
「食の選択」が農業を変え、地球環境を変えてゆく。

不足分はサプリメントで補う。(現代人の多くは質的な栄養失調)
分子栄養学・オーソモレキュラーに基づく栄養療法を取り入れる。
第一のものはタンパク質(プロテイン・20種類のアミノ酸)、1日に50g以上。
続いて補酵素であるビタミン。特に代謝と脳神経に関係が深いビタミンB、ビタミンD抗酸化作用のあるビタミンCEそして、鉄分をはじめとするミネラル。亜鉛・マグネシウムなど(感覚過敏にはミネラルが影響)。あとはDHAなどの必須脂肪酸。
有害物質のデトックスには、亜鉛・セレニウム・αリポ酸の3種が有効。

② 腸内環境を整える(腸活)・・・お腹の中の土づくり

「腸活」を行う。発酵食品を多く食べ、菌のエサとなる食物繊維(有機野菜)をしっかり食べる。
野菜ジュースやボーンブロス、青汁なども効果的。
腸内細菌がセルロースを分解 → 短鎖脂肪酸になる。
リキーガット(腸漏れ)には、土壌菌サプリSBO)が効く。

腸内環境は土壌環境とよく似ている。土が健康ならば野菜はよく育つ。同じように、腸内環境が改善されれば、栄養の吸収や免疫機能が向上し、神経伝達物質の産生も活発になる。
微生物の役割は『分解』。未分解のタンパク質が腸漏れによって体内に入るとアレルギーを引き起こす。
腸と脳は、迷走神経でつながっている。(脳腸相関)

最終的に決め手となるのは「菌移植」(腸内フローラ移植)
菌移植は、直接大腸に菌を置きに行くので生着率が高い → 腸内細菌の多様性を高め、バランスを整える。
人の健康には、共生する菌の多様性とバランスが重要。腸内には約1000種類、数百兆個の細菌が棲む。ヨーグルトなどは、菌種が少なく、通過菌であり、定着しにくい。

次世代シーケンサーにより、腸内細菌叢のDNA解析を行い、菌の量、種類、バランスを調べることができる。
菌移植をおこなうと便の状態が良くなる。

腸内細菌が脳を育てる。成長の角度が変わる。「共生」をベースとした本来の成長の軌道に戻る。
腸内細菌のDNAの影響は大きい。(共進化) 脳機能の正常化、自然な状態へと回復してゆく。視線が定まるようになる、集中力が増す、意思が伝わる、情緒が安定し落ち着いた感じになる。柔軟性・適応力が増す。

菌移植と食事療法は並行して行うといい。移植した種菌が、食事によって大切に育ってゆく。

③ 自然への回帰・・・自然との共生

土にふれる生活=菌にまみれる生活をする。
土1gの中には数百億の菌がいる。土にまみれるということは菌にまみれるということ。

自然農法の畑で過ごす。「1反百姓」を目指す。(Weekend Farmer
自然いっぱいの森の中、ハイキングや野外活動、キャンプなどによって、直接土にふれることが大切。自然の中に溶け込んでゆく。「食」によって、自然(土壌菌)を体内に取り込んでゆく。有機野菜を食べよう。
ヒポクラテス曰く、「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」
ならばその逆をいけばいい。人は自然に近づくほど健康にも近づいてゆく。

子育てには、「森のようちえん」のような場所が一番いい。
土に触れ、大地を裸足で歩き、落葉に埋もれ、泥んこ遊びをする。虫たちや動物、小鳥たちと仲良しになる。自然の恵みをふんだんに受けることができる。
自然は多様なものであり、生きることは循環すること。多様なものを受容し、利他的に生きてつながり合い、一つとなって調和する(バランスをもたらす)。その本質にあるものは「」である。

生命のつながり(生態系)によって、人と地球を生かす。これがサークル・キュアです。
‟人間らしさ”の復帰。「共生」することにより、本来の人間の姿と個性が現れる。

ジブリの映画『天空の城ラピュタ』で主人公シータは、
「人は土から離れては生きられないのよ」と言いました・・・

 自閉症の治療は ⇒ 栄養療法+腸活(菌移植)+自然への回帰

自閉症の治療は、まだ推測や研究段階のものが多く、必ず治るというものではありません。でも、少しでも改善させてゆく道はあるのではないでしょうか。「希望」は持つべきだと思います。クリニックの看護婦さんは、「期待しすぎず、希望は捨てず」と素敵な言葉をおっしゃっていました。

上記に挙げた方法(方向性)で、誰に対しても同じ結果を保障できるというものではありません。だから、ご自身でよく考えた上で、自己責任で行うようお願いします。ただ傾向としては、取り組みは早いほどよく(幼少・発達期の方が効果は出やすい)、食事や環境が発達に与える影響は大きいということ。

自閉の子は、極端な「偏食」があり、食に対しても「こだわり」が強く、食事を変えることは大変なのですが、サプリなどを活用して栄養バランスをとり腸内環境が改善されてくると、食生活は変わってゆきます。腸内細菌が食の嗜好を変える。食の多様性は、腸内環境の多様性にもつながり、菌の働きによって脳の発達にも良い影響が及びます。

「菌移植」の効果は、人によってまちまちですが、腸内細菌の多様性が増すと、精神面や社会性などにも思わぬ効果がみられることがあります。「脳腸相関」で、腸内の変化は脳に影響を与えるようです。ただ、1000種類とも言われている菌の全てが解明されているわけではありません、いろんな菌がいるということです。大海に飛び込むような勇気がいります。

サークル・キュアは人間のみならず、生命全てに通ずる療法です。
生命の星=「地球」においても同じです。プラネタリーヘルスにつながります。

人は「自然」なのだから、自然に帰るのが一番。
自然の輪の中で、ともに仲良く暮らせばいい。
それが、人間らしく、人と地球の健康につながる生き方なのです。

希望を捨てずに、自ら正しいと思う方向に進んでゆきましょう。

※ 「サークル・キュア(Circle Cure)」とは、私が作った造語であり、言葉の示す通り「生態系治療」を意味します。生態系とは、私の解釈によると”生命のつながり”のことであり、生態系を整えること(多様性を高め、つなぎ合わせて、ネットワークを築き、円滑に循環させること)によって、本来の自然な状態(健康)へと治療してゆこうという試みです。

生命によって、生命を生かす。人を生かしえるのは、生命のつながり(生態系)なのです。

2023.6.4 俊邦父