パーフェクトコーディングを目指して

〜生命の中心原理と遺伝情報の実現〜

「生命」とは不思議なものです。
それがどうやって生まれ、どのように受け継がれているのでしょうか?

人間は日々、生体内のどこかしらで生まれ変わっています。
見た目には、人の姿は変わりません。でもそれは、「動的平衡」が保たれているからであって、人が持っている恒常性(ホメオスタシス)のためそう見えているだけなのです。生きているということは、常に新旧が交代してゆかなくてはなりません。「代謝」によって、細胞は生まれ変わってゆきます。
口の中の粘膜などは、ほぼ毎日入れ替わっています。胃の粘膜は、約3日ですべて入れ替わります。
脳はほとんどがタンパク質でできている、そのタンパク質の半交代期は早い組織で約2週間、遅くても半年で半分は入れ替わるといいます。

ここに栄養素が持つ重要性があるのです。新旧交代する為には新しい材料が要ります。
タンパク質は、20種類のアミノ酸からできていて、そのうち9種類は外から補給しなければならない必須アミノ酸です。材料(栄養素)が揃っていなければ、いくら
DNAが正しく指示を出していても、しかるべき生体・臓器は完成しないのではないでしょうか。(不備が生じる、うまく機能しないことがある。)

生体は、分子の集合体です。
人は分子の集合体。人の体を作り上げているタンパク質も分子だし、酵素も分子、指示を出す
DNAも分子です。分子の世界は複雑で、星空の宇宙のように神秘でいっぱいです。

分子にはいろんな意志が働いています。
タンパク質を組み立てる工場であるリボソームでは、材料が揃えば自然とそれが組み立てられてゆくといいます。材料さえあれば、ほっておいても複雑な生体が完成していくのです。まるで、手品か魔法のようです。突然変異も起こりえます。

エイミー・ヤスコ先生が言うように
「遺伝子に語りかけなさい」というのは至言なのかもしれません。

遺伝子は設計図でもある、でもそれによっていとも簡単に複雑な生体が組み立てられていくのは不思議で仕方がありません。遺伝子は分子です。分子間には相互に引力が働いているとか、結合力があるとか言われますが、でも、そういった指向性・意志・想いはどこから来ているのでしょう? 生命の根本に神秘はない、という人もいますが、私には何か目に見えない大きな力(愛)が働いているように思われます。そしてもし、人の想いが伝わるとしたなら、そこに(DNAに)願いをかけることなのでしょう。

私は、エイミー先生の言葉を聞いてから、DNAのことを考えない日はなくなりました。
「分子」を意識しながら生きてみるのも悪くはありません。

1953年、アメリカの生物学者ジェームズ・ワトソンと、イギリスの物理学者フランシス・クリックがDNA分子の二重螺旋構造を発見し、それが遺伝子の本体であることを発表しました。
その5年後、1958年、クリックはセントラルドグマ「生命の中心原理」を発表し、DNAレベルで生物に関して考える「分子生物学」が誕生しました。これらの発見は、20世紀の最大の発見とも言われています。

人間は、核をもった真核生物です。60兆の細胞一つひとつの中に核があり、その中に大切に遺伝子が収納されています。核のサイズは数ミクロン(1ミクロンは1000分の1mm)。DNA分子は細長い糸のようなもので長さは2mくらい。1000分の1mmに2mの紐を収納するとなるとそれだけで大変です。46本の染色体にあるヒストンとよばれる糸巻に分けておさめられています。

60兆の細胞すべてに2mのDNA分子が入っているのですから、全部を繋ぎ合わせると120兆m。太陽と地球との間を400回往復できます。天文学的な長さなのです。
ただし、2万3千個の遺伝子の中身はどれも同じだそうです。

二重螺旋構造の長いDNAの紐には縄梯子のようなステップがあります。ステップの段数は30億。長い長い階段です。各ステップは、アデニン(A)・シトニン(C)・グアニン(G)・チミン(T)と呼ばれる4種類の塩基によって組み合わされています。「塩基対」といいます。遺伝情報は4つの塩基の組み合わせによる暗号文なのです。
今、このDNAの暗号文の解読が、スーパーコンピューターによって猛スピードで進められていっています。

新しい生命が誕生する為には、このDNAが複製されなければなりません。
二重螺旋の2本の鎖がチャックを開くように二つに分かれてゆきます。これを「開裂」と言います。塩基の組み合わせによって示された情報は3本一組で、アミノ酸配列を指示するものだそうです。アミノ酸の配列によって、タンパク質の構造が決まります。
「子どもが親に似る」というのはアミノ酸配列が似ているということなのです。

クリックによって発表された「生命の中心原理」=セントラルドグマ(ドグマとは独断と言う意味)には、このような道筋が詳細に記されています。
DNA→(転写)→
mRNA→(翻訳)→タンパク質、という順序です。

私のような凡人は、セントラルドグマと言えば、漫画・アニメの「エヴァンゲリオン」にでてくる「リリス」と呼ばれる変な怪物を隠している、地下の怪しい秘密基地を思い出します。恥ずかしい・・・笑。(でも、庵野秀明さんは面白いところに目をつけられる方だなと思います。)

話しが逸れました。
セントラルドグマは、多少の修正を経て、今では「コーディング」という名前で知られるようになりました。「コード」とは遺伝情報のこと、「コーディング」とは遺伝情報実現という意味です。
DNA
RNA→酵素タンパク→代謝産物、という経路をたどることもあります。

DNAの指示に基づいて、タンパク質が組み立てられていくうえで、酵素(タンパク質)と補酵素(ビタミンやミネラル)が必要になってきます。「代謝」の種類は約3000種といいますが、酵素と協同因子との親和力の違いにより、結果に差が出てきます。(体質の違いということもできます)
これを、なるべくコーディングの能率を高めるために、サプリメントを投入したりします。
「メガビタミン主義」がそれにあたります。

アメリカのノーベル賞科学者ライナス・ポーリング博士(1954年にノーベル化学賞、1962年にノーベル平和賞を受賞)は、ビタミン大量投与によって病気の治療や予防ができると提言されました。「病気は身体に備わっている調整力によって治るのであり、医療や薬はその手助けにすぎない。」と自然治癒力を強調されました。「さらば風邪薬!」と言う本でも有名です。こうして、ポーリングによって始められたのが「分子矯正医学」と「分子整合栄養学」=オーソモレキュラーです。

精神科医アブラハム・ホッファーは、統合失調症の治療にビタミンB3である「ナイアシン」を投与し成果を上げました。ホッファーはポーリングにビタミンの至適量の投与をアドバイスされています。

日本では、三石巌先生がメガビタミンと同時に高タンパクの大切さを主張し、そして活性酸素の除去と合わせて「三石理論」を完成されました。(パーフェクトコーディング理論は三石先生が提唱されたものです)
私の話しの多くの部分は、これらの先生方の教えの要約です。

私は、自閉症や発達障害の治療にも、これらのコーディング理論やオーソモレキュラー療法を取り入れてみてはと思うのです。アメリカではこれらの「バイオメディカル療法」がかなり進んでいます。(日本では対症療法が中心で、古い習慣に身を置き、リスクを取ってそこまで根本的に追求してゆこうとする人が少ないのです)

人体というのは、水を除けば大部分がタンパク質です。
脳を始めとする内臓・血液・骨・筋肉・歯・皮膚・髪・ホルモン・酵素に至るまで、ほとんどの主要成分はタンパク質です。タンパク質は20種類のアミノ酸によってできています。

DNAの暗号は、塩基の組み合わせであり、その指示によってアミノ酸の配列が決まり、タンパク質の構造が決定するのです。そのタンパク質によって生命体はできています。タンパク質の組立て作業には、酵素タンパクと協同因子であるビタミン・ミネラルが必要です。

ビタミン・ミネラルについては順次勉強してゆきましょう。まずは、タンパク質を構成するアミノ酸から。人体に必要な20種類のアミノ酸は以下の通りです。

<アミノ酸 栄養学上の分類>
2005年米国医学研究所発行の書籍によれば以下のように分類している。

必須アミノ酸
ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン

条件付き必須アミノ酸
体内の代謝だけでは必要量を十分には賄えないことがあるアミノ酸。
アルギニン、システイン、グルタミン、グリシン、プロリン、チロシン

非必須アミノ酸
アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、セリン

お時間のある方は一つひとつ検索して、その作用と、どんな物質であるかを調べてみてはどうでしょう。面白い発見と、必要な栄養素の組み合わせがわかるかもしれません。

今回は、生命の中心原理ということをテーマにコーディングについて考えてきました。
しかし、それにしても「生命」をつなぐ人間のDNAというのは不思議です。
一つ二つの偶然ならわかりますが、30億ビットの塩基対がすべて合目的的な方向に結合し、進化するなんてことがありえるのでしょうか?
そこには、なにかしら中心となって働いている「意志」があるのではないでしょうか・・・(私の考察です)

一つの細胞だけでもそうなんです。
それが、60兆全ての細胞の中で、一糸乱れず、同じように起こっているのです。そして私たち人間が存在し、生きているのです。生き物たちは繋がり合い共生し、循環しながら生態系を築き、自然環境、生命の星「地球」を築いています。単なる偶然の産物として、進化論で片付けられるようなものではありません。

「生命の中心原理」の中には、大きな存在が隠されているのです。
だからこそ、そこに“語りかけなさい”と言う人がいるのです。

千葉県にあるマリアクリニックの院長である、柏崎良子先生はクリスチャン医師です。
オーソモレキュラーによって、発達障害の治療を試みておられます。先生は、DNAは神によってデザインされたものという考えをもっておられます。
「私たちの身体を造りだしているのは、薬ではなく、栄養です。」
「分子整合栄養医学とは、必要な栄養素を補給することによって、健康の設計図である遺伝子に描かれた、その人本来の健康な状態に向けて回復させる治療法です。」と言うことです。

そういう医療もあっていいものではないでしょうか・・・・
むしろこれからは、栄養学を知らない医師は相手にされなくなるかもしれません。

そして、時代はDNAとコミュニケーションする時代へ。遺伝子に語りかけてゆきましょう。
人と生命の倫理に反さないように、DNAについて学び、その真に意図する方向へと進んでゆきましょう。
あるべき本来の姿、「答え」はDNAの中にあるのだから・・・

俊邦父 2019.6.23