「分子栄養学」を知って健康を自主管理しよう

「現代食」における問題は、さまざま取り上げられています。
糖質(炭水化物)中心で、カロリーベースで考えられ、量は多く、食べ物は溢れていますが、「質的な栄養失調」だと言われています。精製された米やパン、農薬や化学物質にまみれ、品種改良された野菜。ビジネス(お金儲け)によって世の中が動きますから、見栄えばかりで栄養価の低い人工物が増えてしまいます。
“バランスの良い食事”と、平均的にものごとを見て判断されますが、人には個体差があり、ビタミン・ミネラル不足、タンパク質不足の人は多いようです。それが、病気や障害として現れています。(古い栄養学は、「古典栄養学」と呼ばれます)

もっと、自然に返ろう!
人間は自然の一部なのだから、「自然食」自然のものを食べ、生態系の循環の中で生きたい。
自然農法で野菜を作り、菜食主義で、オーガニックな生活を送る方もいます。
それは、大きな目で見れば正しいことかもしれません。
ただ、時に自然は無慈悲なところもあります。「弱肉強食」「適者生存」は自然の掟です。そうなることが地球のバランスを取ることなのかも知れません。
でも、人間は「愛」をもった特別な存在です。木々や草花や動物のように、間引きや間伐、出来が悪いから駆除するなんてことはできません。我が子が病気になったなら、自然に任せて放っておくことなどはできません。持って生まれた生命を幸せに全うさせてあげたいと思います。その為には思いつくいろんなことをします。

私の自閉症の子供が、不安定でイライラし、問題行動をたくさん起こし困ってしまった時、通院先の心療内科の先生は、結論として、「解決策は二つしかない、一つは抗精神病薬を飲むこと、もう一つはビタミン剤を飲むこと。」「両方を併用してもいい」と言い、分子栄養学の本と、メガビタミン療法のアドバイスをされました。
栄養学は医学ではないので、医者がビタミン(サプリメント)を処方することはありません。(儲けになりません)
だから、自主的に勉強し、自己責任でサプリを購入し、食事を工夫してゆくようです。

「分子栄養学」とは分子生物学から来たものだそうです。
分子生物学は、生命現象を分子を使って説明(理解)することを目的とする学問です。
1953年、イギリスの物理学者クリックとアメリカの生物学者ワトソンによって、DNAの構造が解明されたときから「遺伝子の実体」が明らかになり、生物の成り立ち、生命の法則がわかり、生物学はがらりと変わったのです。ですから、当然のことながら人を育む「栄養学」も根本から変わるということになります。

ここからは、ダイジェストで「分子栄養学」について説明します。

分子栄養学で言う「分子」とは、分子レベルで栄養について考えてゆくということ。その中心になるのは、各自が持っている「遺伝子」=DNAだということです。DNAは人体の「設計図」であり、タンパク質の構造を暗号化したものです。
人体のほとんどはタンパク質でできており(炭水化物ではありません)「タンパク質は生命をつくる」と言われるほど重要なものです。
生物学的に言うと、すべての生き物は「個体」と「種」の保存を目的に生きています。人体にも「合目的性」があり、DNAの中に病気を治癒させ、自ら健康を維持する為の道筋が記されています。ですから、我々はDNAが要求する必要な材料(栄養素)を揃えればいいのです。

タンパク質

人間は60兆の細胞からできています。
その一つひとつの中に、遺伝子が2万3千個あり、その指示に従って20種類のアミノ酸の配列が決まり、10万種類のタンパク質を作ります。それがおのおの目的をもって存在し、人体を作り上げているのです。
タンパク質は、英語で「プロテイン」と言い“第一のもの”という意味です。
20種類のアミノ酸のうち9種類は自前で作ることのできない「必須のアミノ酸」です。ですから、プロテインを補給する際は、その必須アミノ酸を、人体が求めているのと同じ比率で含んでいる良質なタンパク質が望ましいということです。(プロテインスコア100のタンパク質と呼びます)
人間は、1日に体重の1000分の1のタンパク質が必要とされています。(体重50kgの人で、50gです。)
食品の中で理想的な代表選手は、「卵」だそうです。

※プロテインは夜に摂取し(体は夜に育つ)、卵を1日2個食べ、肉もしっかりと食べましょう。

ビタミン

タンパク質を目的に応じて作るには、酵素タンパクとサポート役としてのビタミン(補酵素)とミネラル(補因子)が必要です。ビタミンが足らないと、タンパク質を作る能力が低くなり、体作りや体質改善も望めなくなります。
ここで、重要になってくるのが、ビタミンの必要量が人によってかなりの個体差があるということです。カギと鍵穴に例えられる「確率的親和力」の違いがあり、AやEなど脂溶性ビタミンで10対1、CやB1などの水溶性で100対1の開きがあるそうです。だから、必要な人はたくさん飲まなくてはいけなくなり「メガビタミン療法」というものが出てくるのです。

ビタミンはそれぞれに重要な働きがありますが、特に脳や精神に影響するものとして、ビタミンB群があります。神経伝達物質の合成回路には、ビタミンB群である、ナイアシン、葉酸、ビタミンB6、ビタミンB12などが必要です。
ビタミンB群はストレスによる消費量が大きいことや、腸内環境によっても必要量が大きく異なることで知られています。ですから、不足分を補給しなくてはなりません。
そしてまた、発達障害のお子さんは、腸の状態が悪く、便秘や下痢を伴うことがほとんどです。

※昔、映画「レインマン」の制作指導をされていた、全米自閉症協会の創始者(息子さんが自閉症)のバーナード・リムランド博士も息子さんに、ビタミンB6とマグネシウムを大量に飲ませておられました。

ミネラル

次に、ミネラル。やはり一番注目されるものは「鉄」です。
鉄は地球でいちばん多く存在している元素です。地球の重量の30%は鉄でできています。
地球は「鉄の惑星」なのです。その鉄の存在が、生命誕生に大きくかかわっています。
血液のヘモグロビンの働きは、鉄の働きのことです。呼吸、DNAの合成、光合成や窒素固定、生命活動において鉄は中心的役割を担っています。
鉄がなければ、地球上のほとんどの生命体は生きてゆけないのです。
そのため地球上の生き物は、動物だけでなく、植物も、細菌も、鉄の奪い合いをしながら生き延び、子孫を残しています。

人は、体内に鉄が増えてゆくと、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどが分泌され感情が安定し思考が柔軟になります。うつ病患者のほとんどが、鉄とタンパク質を補給することにより症状が改善します。
また、発達障害や自閉症の治療にあたられているお医者さんが、そのようなお子さんを検査してみると、ほぼ例外なく鉄が不足していたということです。
私は、これらの話しを聞いてすぐに、家じゅうの鍋、フライパン、やかんなどの調理器具を全部鉄製のもの(南部鉄器)に変えました。(笑)

※鉄のサプリメントとしては、ヘム鉄がいいか、キレート鉄がいいかで意見が分かれていることがありますが、ケースに応じてお考えください。
鉄以外にも大切なミネラルはありますので、順次勉強してゆきましょう。

あと、分子栄養学を提唱された、第一人者である三石巌先生は、
「高タンパク」と「メガビタミン主義」を主張されるとともに、「活性酸素の除去」ということを上げられました。(三石理論)

体内のタンパク質や脂肪が活性酸素の働きにより酸化し変質してしまう。それが多くの病気の原因になっています。ですから、活性酸素の“掃除屋”スカベンジャー(抗酸化物質)を摂取しましょうとのことです。

先に申しあげました通り、分子栄養学とは「個体差の栄養学」です。
ただ単に、平均的にものごとを考えてカロリー計算で栄養を計るのではなく、各々のDNAの要求に基づいて、遺伝子をフルに活動させるために必要な、十分な量の栄養物質を摂取するということです。答えは体自体が出してくれるでしょう。
現代社会の中で歪められた食生活。その中で質的な栄養失調に陥り、さまざまな病気や障害を持つに至った人々に、本当に必要な、豊かな質の高い「栄養」が届けられますように。

人の体は、「代謝」によって細胞がどんどん入れ替わってゆきます。
未来の自分は、これから食べてゆく食事(栄養)によって、変えることができるのです。

俊邦父 2019.1.26

 参考にさせていただいた、「分子栄養学」の本のリストです。
    自己責任で学び、健康に役立てていってください。