土壌は魔法の世界 〜「国際土壌年」をふりかえって〜 昨年、2015年は国連が定めた「国際土壌年」でした。 ご存知の通り、土壌は生命の源であり、 私たちの食べる「食糧」、お米やパン、野菜はもちろんのこと、お肉となる牛や豚、鶏も元をたどれば土に行きつきます。お茶や牛乳やジュースも土の産物です。水を貯め、浄化しているのも土。「住まい」においても、柱に使う木、レンガ、畳、紙も土を通して得られます。「衣類」となる綿やウール、絹も土。化石燃料もバイオエネルギーも土に由来するものです。 しかしその土は、地球を薄く覆う膜でしかありません。 スプーン1杯の土壌の中には、数十億の微生物や小動物が住んでいます。 微生物とは、肉眼では見えないような小さな生き物のこと。菌類(カビ・キノコ・酵母など)、細菌類(バクテリア)、藻類、原生動物(アメーバ・ゾウリムシなど)、ウイルスなどです。「なんかウジウジとしていて、バイ菌のことじゃないのか。気持ち悪い。」と思われる方もおられるかもしれません。(それは、人間が勝手に思っているだけです)でも、彼らは「地球の掃除屋さん」で、生ゴミ・排泄物・死骸もすべて分解し、清浄なものへと変えてゆきます。 土がちょっと手についただけで「ばっちい」「除菌だ、消毒だ」と躍起になっているお母さん。 私は、以前からずっと不思議に思っていました。 最も汚いと思われていたものを通過し、もっとも清く美しいものとなって出てきます。 土壌は「清浄」の本源なのです。 実際は、自然の中で土いじりをして、それが口の中に入っても何ら問題はない。病気にもならない。天然の土は私たち人間にとって益こそあれ、害はないといわれています。赤ちゃんが下に落ちているものなど何でも口に入れたがるのは、本能で体内に微生物を取り込み、自己の免疫機能を高めるためである、という学説もあるそうです。 話しを「国際土壌年」に戻しましょう。 昨年は「土壌年」ということで、各地でイベントが催されました。 そして、特に気に入ったのがビデオコーナーで流されていた、デボラ・ガルシア監督の「Symphony of the Soil」(邦題:土の賛歌)というドキュメント映画です。映像の美しさに目がくぎ付けになりました。土壌と有機栽培のことが語られています。早速、ネットで調べて、NPO法人日本有機農業研究会に注文し送ってもらいました。 『土は生命の源』 農業で大切なのは、薬や化学肥料に頼ることなく、有機物を土に返し、地力を高め、自然の生命力に委ねること。特に印象に残ったフレーズを書いてみましょう。 「土の中はいつも大晦日のタイムズスクエアの賑わいです。」 「農業のやり方によって、全く違う結果が出ます。」 「今重要なことは、アルバート・ハワードが唱えた“循環の法則”です。土壌の生命活性・再生力を維持増進するには、土から奪ったものを全部土に返すということです。」 「私たちは土からできています。食べ物は土壌から生まれます。土壌に戦争を仕掛ければ、人類が生存するための土壌の肥沃度を完全に奪うとしたら、全人類レベルの自殺でしかありません。」 「土壌の生態を回復すれば、たくさんの問題が解決します。殺しちゃダメです。」 最後に小さな女の子が泥んこになって土遊びをしている姿が出てきて、その笑顔に感動のあまり泣きそうになりました。「土は清浄なのです」 今日は、国際土壌年にちなんで、土壌の不思議についてお話してきました。土壌は、生態系の中でもその基盤となる最重要の資源なのです。 『地中生命の驚異』という本の著者、デビッド・W・ウォルフ氏は、「ごく最近まで、土壌微生物の99%について、我々は無知も同然であった。」と言う。そのような未知の世界が私たちの足元には広がっており、すべての生命を支えているのです。 土壌は魔法の世界。というか、「生態系」自体が神様のつくった魔法の“生命のサイクル”なのですね。 2016.1.6 |