日本森林ボランティア協会

第15期「森林大学」呼子高原での実習プログラム

2004/10/28〜31

 大阪には、NPO法人の「日本森林ボランティア協会」という、緑を大切にする素晴らしい団体があります。林業の衰退にともない放置されている里山の保全に取組み、健全な樹木を育て、『明るい森』を作ろうとしています。
大阪近辺の山々、森の中に入って行って、下草刈りやツル切り、枝打ちや除伐などをおこない、樹木の手入れをして、草花を育て、昆虫や動物、小鳥などの生き物を大切にします。(山登りや植物観察、クラフトの部会もあります)
まだまだ、活動の規模としては小さいのですが、「月に一度は山仕事!」を合い言葉に、皆さん精力的に、生き生きと、楽しく活動しておられます。

 そんな、森林ボランティアが、毎年、市民大学として開設しているのが『森林大学』です。今期で15回を数えます。私もようやく時間が取れたので、念願がかない参加することとなりました。約半年間、土日の実習が数回と、月に2〜3回のペースで夜間の講義があります。
森林のしくみや植物の生態、自然環境のこと、林業の課題や森林ボランティアの活動方法など、内容盛り沢山で、疲れていても夜の講義が楽しみです。
実習もいろんなプログラムがあり面白いのですが、特にその中で一番の「目玉」となるのは、3泊3日で行く、鳥取にある呼子高原での実習です。
今回はちょっとだけ、私が体験した「呼子高原での実習」をリポートいたしましょう。

【呼子実習プログラム】

 10月28日、夜、梅田の中央郵便局前に集合して、マイクロバスに乗り込み出発。参加者は、インストラクターを含めて26人です。
中国〜米子自動車道を4時間走って、大山の西の方角、日南町にある「呼子」に到着。このあたりは、YMCAが青少年の育成の為に買い取った土地が広がっていて、杉檜の人工林とコナラ・ミズナラ・クリなどを中心とした天然林とが、ほどよく入れ混じっていて、自然学習にはもってこいの場所です。
特に今の季節、紅葉がはじまっている落葉樹林の雑木林は、ボランティアさんによって手入れされていて、みごとな植生が広がり、とても美しいです。森の中に足を踏み入れると、小川のせせらぎや、木の葉の触れる音、小鳥の鳴き声、など・・・そして、澄んだ空気、土の香り。こういう森の中を散歩するのは最高のぜいたくだと思います。うっとり、してしまいました。

 さて、宿泊場所のロッジについた私たちは、さわやかな朝を迎え、さっそく野外活動。(初日の夜はめちゃめちゃ冷えました)天気は晴れ。天気予報では3日とも雨の予報だったのに、なんと3日とも晴れ、晴れ、晴れ! 自然が歓迎しているからでしょうか・・・
心配されていた実習もパーフェクトにこなせました。

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 1日目の実習は、人工林の手入れ、ヒノキの枝打ち(下の方の枝なので裾払いとも言う)と間伐を行いました。

枝打ちを行う理由は、
1. 光を多く取り込むため 2. フシを無くすため 3. しまった良材ができる、ということです。
間伐は、木立の密度を調整して、丈夫な木を育てる。
間伐を行わないと、ひょろひょろの木ばかりとなり、台風などで根こそぎ倒され、土砂崩れが生じる原因となります。

私たちの身支度は、頭にヘルメット、首にタオル、腰にはノコギリと鉈をぶらさげ、足元は軽登山靴(地下足袋の方もいます)。3つのチームに分かれて(私はコナラ班)、次々に枝や木を切り倒してゆきます。汗びっしょりになります。日頃の堕気やストレスも一気に発散できます。暗かった森に、光が射し、さわやかな風が吹くようになりました。

夜は、野外料理。きのこ御飯に豚汁、インストラクターの「マリオ」さんが、どこからかコウ茸というおいしいキノコを見つけてきて、御飯に混ぜました。

 PM 7:00 からは、講義「呼子の自然と森林保全」です。このあたりの土地は昔「たたら製鉄」が盛んだったそうで、砂鉄を溶かすために、炭を使い、その為にたくさんの木が切られました。(宮崎アニメの「もののけ姫」の世界です)玉鋼1トンを生産するために、木炭15トン(約1000俵)使ったそうです。山は次々に裸にされてゆきした。文明の発達は、自然破壊の側面ももつのです。幸いだったのは、日本が湿潤で、森林の再生能力が高かったということです。

2日目の実習
 ロッジの裏山にある天然林の手入れをしに行きました。主にコナラが中心となる広葉樹林帯で、いろんな植生がみられます。ただ、それが温暖化の影響もあるせいなのか、常緑樹によって駆逐されつつあり、薮におおわれた暗い森へと変貌してゆく傾向にあります。この日は、広葉樹に被いかぶさるソヨゴなどの常緑樹を除伐し、光を取り込んで、多様な植生を復元することに取組みました。(木と木の間隔は4〜5mくらいがいいそうです。)光りが射した土壌には、さまざまな山野草が育ちます。
また、広葉樹は萌芽更新で、切り株から「株立ち」している場合が多く、その場合、良い木を2〜3本残して、後は切ります。(過当競争を避けるため)

このあたりは、20年〜30年くらいの木が多く、中には直径10cm 以上、高さが10m 近い木もありました。徐々に木を切るのにも慣れてきまして、バッサバッサと切っていました。まず、倒す方向に「受け口」を作り、反対側から追い切りをします。切った木は、1.5 m くらいに分断して整理し、切り株にひっかけて「棚積み」しておきます。

手頃なコナラの木は、切りそろえて持ち帰り、椎茸を栽培するための「ほだ木」として使います。ひと冬乾かして、来年の春、種菌の入った種駒を埋めます。

 夕方になって、近くの温泉へと汗を流しに行き、その後は恒例のバーベキュー大会。
焼肉、ソーセージ、鶏肉、ジャガイモ、サンマ、茸、りんご、ナス、玉ねぎ・・・自然の中で、炭火で焼くバーベキューは最高にうまいです!みんな、夜遅くまで飲み、語り合っていました。(酒豪が多い)

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 3日目は半日の野外学習。近くの山を散策し、茸狩りに挑戦しました。
キノコは人があまり足を踏み入れない、山の斜面の中腹でみつかります。道なき道を木にしがみつきながら歩きます。あんまり、下ばっかり見ていて、迷子にならないようにしましょう。今年は数が少ないようでしたが、何人かの方がコウ茸や○○のキノコを採っていました。
そして、小川にそって森の中を散策します。私は、自然観察は初心者で知らない事ばかりだったのですが、皆さんよく木や草の名前を知っておられて、「これは食べれる」とか「毒がある」とか話していました。

 振り返ってみると、3日間は、あっと言う間に過ぎてしまいました。
これからまた、大阪に帰って、機会があれば近くの山に「森林ボランティア」として参加してゆきたいと思いました。
呼子で過ごした夜に語り合ったのですが・・知的障害者の施設は山手の方に建てられることが多いです。「障害者も森林ボランティアに参加し、自然を守り、人々の役に立てるといいね〜」

そんな思いと「夢」をいだきながら、私は山をおりてきました。

2004/11/24

日本森林ボランティア協会のHP・・・http://www.npomori.jp/


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