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「自然の中から再出発」

〜 森林大学15期 卒業文集より 〜

 森の中へ入っていくのは楽しい。都会の中の喧噪や人間関係の煩わしさもなくて、胸いっぱいに空気を吸い込むと心の中まで洗われるような気がします。見渡せば緑、青い空。耳をすませばせせらぎの音。踏みしめる土の感触、落ち葉を踏む音。自然に近づいていくにしたがって、ああ、人間は自然の中から生まれてきたんだなあと感じさせられます。だから自然に帰ると、なつかしく、癒されるんだなあと思います。
森林ボランティアは、その自然の中にどっぷりと浸かって木々と肌をふれあい、土にまみれて汗を流す。本当に森にとっても人間にとっても爽快で気分のいい活動だと思います。

「森林大学」での一番の想い出はやはり呼子高原での実習。夜遅くバスに乗って出発した時は、会社を退職したばかりの頃だったから、長くて暗いトンネルの中をくぐっているような気分でした。でも三日間、森の中に入って汗を流しているうちに、初心に帰り、再就職に向けて良いスタートを切れたような気がします。キャンプなんかでもそうですが、自然の中に入ると人間は素直で正直になるのかもしれませんね。もちろん、森についてもたくさん学び、しっかり実習しましたよ!

 今、私の机の上には、呼子で間伐をした際に、輪切りにしていただいたコナラの幹の木片があります。芯は固く、樹皮は柔らかなコルク状、凹凸の模様や色合いが実に良いです。この木片を見ていると、また山に行きたい、木を切りたい、と思います。いっそのこと、山に住んじゃおうか・・・なんて夢を見そうになってしまいます。

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 その後、私はガイドヘルパーやホームヘルパー研修を受けて、福祉の道へと進むことに決めました。息子が重度の自閉症であることから、障害者の就労支援やデイサービスをおこなう社福法人へと就職を決めたのです。お給料は少なく、大変な仕事ではあるのですが、今の自分には一番向いている仕事だと思います。毎朝、たくさんの障害のある青年たちと挨拶を交わすのが楽しみです。
ところで、「森林大学」の講義で学んだのですが、戦後の一斉造林で植えた杉や檜が、後10年もすれば伐期を迎えるそうです。林業も人手が足らなくて大変なんですね。子どもに障害がなく福祉と縁がなければ、夫婦で田舎に住んで、林業に向かっていたかもしれません。

 ともあれ、私たちは「森林ボランティア」という素晴らしい団体に所属しているのですから、ここで結んだ『縁』を大切にして、今後もいろんな活動に参加してゆきたいと考えています。里山の整備や炭焼き、クラフトや自然観察、やりたいことは沢山あります。そして、障害のある子どもたちも、森の中に入って、等しく自然の恵みに触れることができるようにと願っています。また、どこかで私を見かけた方は気軽に声をおかけください。メールも受け付けています♪ 下記のアドレスは私のホームページです。

「天真爛漫」http://www.eonet.ne.jp/~tensin/

2005/3/21

第15期 森林大学 卒業文集「森友」(しんゆう)
Friends of Forest に掲載して頂きました。

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