ルドルフ・シュタイナーの教え

ルドルフ・シュタイナーは人生を大きく三つの時期に分けた。
肉体を躍動させて生きる青年期と、心や知性を中心として現実社会に生きる壮年期、それに対して老人は「霊性」で生きると書いた。肉体も知性も衰えた老人だが、しかし次なる世界を感知する感覚だけは鋭くなっていくと彼は説いている。
私もそういう老人の時期に差し掛かってきたのかもしれない。
今までは現実の生活と社会的な役割を果たすために、日々追われるような毎日だった。宗教とか人生とかゆっくり考える暇もない。(言い訳かもしれないが)
だけども、そろそろ人生の本当の意味や行き先を考えるべき時が来たようだ。だから、このコーナーでは、心の話し、宗教の話し、人生とその行き先について話してゆこうと思っている。
今まで歩んできたこと、障害のある子供をもったことも、一つ一つ何か意味があることなのかもしれない。いろんな本や経典を読みながら整理して、進むべき道を見つけてゆこう。
折角なのでシュタイナーのことを少し書いておきます。
ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861 - 1925)は不思議な経歴の持ち主です。
キリスト教神秘主義の流れをくむ思想家であり、人智学(アントロポゾフィー)を唱え、「本当の自分」「真の自由」について教え、既成の学校教育の枠にとらわれない教育(オルタナティブ教育)を提唱されました。「シュタイナー教育」と呼ばれています。現在、シュタイナー学校は全世界に900校以上あると言われています。
障害児に対する「療育」の先駆者でもあり、芸術や自然にふれることを治療に取り入れました。イギリスでは「療育」といえばシュタイナー教育の代名詞と言われるほど評判が高いです。インスピレーションを大切にし、自然に溶け込むことから、ヨーロッパ版の「森のようちえん」にも繋がってゆきます。霊性を高めて「本当の自分」を見つけ自由になることを目指しています。
また、政治においては、ドイツ「緑の党」結成の思想的背景には彼の人智学があります。
活動は農業にまで至り、アルバート・ハワードと並ぶ有機農業の源流ともなっています。
生態系を生かし、外部から農薬や肥料を持ち込まない、「バイオダイナミック農法」と呼ばれています。近年アメリカで広がっているCSA(地域が支える農業)もここから始まっています。
シュタイナーは盛んに講演を行い、書籍もたくさん出版されています。
ただし、その著書は非常に難解で、私も何冊か手にしましたが、「アストラル体」や「エーテル体」など聴き慣れない言葉が出てきて、宇宙や霊界の話しになるとチンプンカンプンでした。超感覚的世界を語り、透視能力を持った霊能者であるとまで言われています。まるで、活動しながら禅やヨガをやっているようです。きっと自然や生活の中で多くのインスピレーションを得ていたんでしょうね。
今でも、その思想はエコロジーと宗教をベースとしているので、環境活動家に影響を与えています。生態環境的観点に立ち、スピリチュアルな指導を行うことから現代のニーズにマッチして復活しているのだと思います。

私についてですが、シュタイナーに少しあやかろうと何冊か本を買い求めましたが、結局分かったことは、 年をとったなら「霊性」を大切にして人生を振り返りなさいということぐらいでした。
そうそう、もう一つ学んだことがあります。
「宗教」とは、日本語では“もとの教え”。英語(ドイツ語でも)ではリ・リジョンRe-ligion 。
Reとは“再び”、ligionは“結びつける”という意味らしい。
神から離れていってしまった人間を、再び神のもとに結びつける(つなぎ合わせる)ということ。すなわち、愛と慈悲の心に帰るということです。それが救いなのです。神様の心を知るために、「霊性」を研ぎ澄ませなさいということらしいです。
やはり言っていることは同じなのですね。
「行動においては愛に生きること、
他者の意志に対しては、それを理解して生かしめること、
これが自由な人間の生き方の基本となる姿勢である。」
ルドルフ・シュタイナー
2024.11.22
