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「生命の素材」と循環システム


突然ですが、あなたは宇宙人がいると思いますか?
映画で見るようなエイリアンはなかなか信じることはできないかもしれません。
でも微生物ならどうでしょう。地球外生命体としての菌がいるかどうか・・・

宇宙科学者たちは、宇宙での生命体を探索する上で、まずその前段階として「生命の素材」としての、COHNの存在を確認するそうです。

COHNとは、炭素・酸素・水素・窒素の元素のことです。

生物と宇宙の原子組成はよく似ています。
宇宙で最も多い元素の上位元素は、COHNにヘリウムを加えたものです。
そして、先にあげた元素は人体を構成する原子の95%以上を占めています。

今日では、多くの学者が他の惑星に微生物が実際に存在する可能性を認めています。
ただし、この生命の素材であるCOHNは、ただあるというだけでは駄目。いかにして循環し(循環システムをもち)、繋がり合って生態系を築き上げていくかにかかっています。

その複雑な構造を築き上げる、指向性、知性、意志、想いがなくてはなしえない。これが宇宙の神秘なのです。(素材の希少性ではなく、完璧に近い構成の複雑さに鍵がある)

話しが宇宙の果てに飛んでしまいました。畑に戻りましょう。
要するに私が言いたいのは、畑の中でこの生命の素材であるCOHNをいかにして循環させてゆくかを考えてみたいのです。

それ自体が動かず、単体で存在していても、生命に対してあまり意味を持ちません。循環するシステムを有してこそ生命につながってゆくのです。人間もまた同じかもしれませんね・・・

COHN =「生命の素材」を循環させる為に・・・

C(炭素)⇒ 緑を増やし、日当たりを良くして「光合成」を促進することで、より多くの炭素を固定することができる。固定された炭素は炭水化物(糖)として生命体内に貯蔵されてゆく。そして、大気中には代わりに酸素を放出される。
「草生栽培」を行うことにより、緑の量を増やし、光合成を活発にする。
耕さないことにより、有機物を地中にとどめ固定しておくことができる。
CO₂は地中か生物体内に固定されている。大気中のCO₂と地中に固定されている炭素の量は、ほぼ同量であるらしい。緑を維持することは地球温暖化防止へとつながるのです。

O(酸素)⇒「呼吸」が活発に行われ、酸素を取り込み、燃焼して生きるエネルギーをもたらす。通気性(風通し)を良くする。
植物の根も呼吸している。水につかったままだと根腐れを起こす。ミミズや微生物を育てることにより、土壌の団粒化を進め隙間を作る。あるいは空気を入れ通気性を良くする。隙間が大切なのです。3本鍬(備中鍬)で空気を通すように耕すとよい。

H(水素)⇒ 生命に水は欠かせない。草をかぶせて保湿する。(草マルチ)
水がよく循環するように、水はけを良くする。(水はとどまると腐っていく)
体の中を水が循環していく。水を飲んだら→オシッコがしたくなる。溜めたままだと大変なことになる。人の体も水はけが大切でしょ。 保水と排水 水と空気のバランスが大切。
ミミズと微生物の働き → 土壌の団粒構造(通気性と保水力)

N(窒素)⇒ 自然界では窒素固定細菌、マメ科植物の根粒菌(リゾビウム)によって固定される。 植物と微生物の共生関係が大切なのです。
生命体にとって窒素は欠かすことのできない栄養素。
生物体内の窒素は大部分タンパク質および遺伝子のそれぞれの基本構成分であるアミノ酸および核酸の形をとっている。

窒素N₂は3重結合で分解されにくい。(不活性である)
窒素固定細菌はニトロゲナーゼという酵素によって空気中の窒素を分解し、アンモニア(NH₄)として固定する。この貴重な酵素であるニトロゲナーゼは地球上に数kgしか存在しないと言う。

科学者たちはパニックになった。窒素肥料不足により世界人口の増加に対応できないと思われた。
そこで現れたのが、「空気からパンを作った男」と称されたドイツの天才学者フリッツ・ハーバー。(1919年ノーベル化学賞を受賞)彼が窒素を固定し、量産化に成功した。
ハーバー法:高温・高圧により窒素を固定。(約500℃の高温、数百気圧の圧力が必要)

化学肥料の普及 → 窒素汚染物質が環境に流出する。高濃度の窒素、硝酸塩は有害。
「富栄養化」によりデスゾーンが広がる。また、二酸化窒素(NO₂)はCO₂の300倍の強力な「温室効果」をもたらす。
窒素を固定することによりできるトリニトロトルエン(TNT)は爆弾の原料である。
現在、ハーバー法による窒素固定量は、自然界における窒素固定細菌による固定量を上回っている。人類は深刻な形で窒素循環への干渉を行っているのです。

窒素肥料・農薬を作る会社 ⇒ 戦争が始まると軍需産業となる(爆弾や化学兵器)

モンサント・・・ベトナム戦争で枯葉剤を製造(ダイオキシンを含む)。除草剤ラウンドアップ。
遺伝子組み換え作物の種の世界シェアは9割に近い。
Natural Societyはモンサント社を人間の健康と環境の両方を脅かすとし2011年最悪の企業に認定した。最近では除草剤の中に発がん性物質を含むと訴えられている。
2018.8、モンサントは独バイエルンに買収された。

植物が成長に欠かせない要素に、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)の3つがある。これらは肥料の3要素と呼ばれており、葉や茎を丈夫にしたり、収穫量の増加など重要な働きをします。

リン酸・カリウム → 「菌根菌」の助けが必要。(90%以上の植物が菌根を有している)
一握りの土、毛根の10分の1の太さの菌糸が何マイルも張り巡らされ、ミネラルなどの養分と糖を交換している。(植物と菌の共生関係)

だから微生物にダメージを与えるような耕耘はダメ。植物と微生物の共生関係を崩してしまう。耕すと人工的に肥料を入れ、薬をまかなくてはならなくなる。
※ 自然農法のキーポイント「なるべく耕さない」= 微生物への配慮です。

畑の中においては、これら4つの「生命の素材」をいかに円滑に循環させていくかを考えながら農作業をしている。

以下、土と微生物に関する思いついたことを書きならべてみます。

〇「バイオレメディエーション」・・・・微生物による有害物質の分解、病気の無害化。

病気に対して、土の中の微生物が果たす役割は大きい。 多様性とバランスによって病気を抑制する。
雑草と微生物に見捨てられたら、その土地はおしまい。去るしかない。
痛んだ土を元の自然の生態系に戻すのは、植物と微生物。本当の責任者は彼らである。
草があれば土が育ち、生き物が増えてゆく。もしこれを失ったならば死しかない。
意外とこういう単純なことで何万という人が死に、文明が滅んでいく。

地球をクリーンアップ(無害化・清浄化)しているのは微生物であるし、
CO₂を吸収し、温暖化を食い止めようとしているのは地球の緑(植物)なのです。
微生物の分解作用と植物の光合成はなんと素晴らしいことなのでしょう。

〇 ミミズの働き

土壌は何度も、ミミズの腸の中を通過して行っている。その際有用な微生物を付与し、団粒構造を形成するようになる。地上表面付近のほとんどの土壌はいわゆるミミズの糞である。

ミミズが元気に活躍する畑にしたい。
少し鍬を入れると、ミミズが「僕は大丈夫だよ、元気だよ!」と尾?を振って答えてくれる。(個人の感想です)そのような土地にしたい。 1平方メートルに何十匹とミミズがいるのに、可哀そうで耕耘機をかけることなどできない。

ミミズが一匹もいない土地など気味が悪い。

〇 緑と水と土と生命

「緑」と「水」と「土」と「生命」はセットで考える。
(草)       (ミミズ・微生物・人間 etc..)

森林は「緑のダム」、多くの水を保水している。
山火事があれば、緑が失われ、温暖化が進み、地球のどこかで人が死ぬ。
水が失われば、草は枯れ、土は乾いて、砂漠になる。人は住めなくなる。
耕し過ぎたら、土は乾き、緑が失われ、文明は滅んでいく。
微生物がいなければ、緑は分解されず、土は痩せてゆく。

微生物が、団粒構造の土を作り、保水と通気性を確保し、草木をそだちやすくしている。

「生物の多様性」→ 一番生物が多く多様な場所はどこですか? = 土の中
だから土を大切にしなくてはいけません。
土は生態系(生命のサークル)の基盤・土台となるものです。

〇 土の成長

「地力」を高めるためには、緑の多い畑=「草生栽培」が一番好ましい。
「草生栽培」とは・・・・草を生かしてゆく栽培方法

草を育て、みどりいっぱいの畑にする。
同時に虫も微生物もいっぱい増え、生命のあふれる畑となる。
雑草も生えないような土地に野菜が育つわけがない。(同じ草なのだから)
草を厄介者にしていると土地がダメになる。野菜もダメになる。

緑がなく、光合成していないのに、どうして土が肥えていくのでしょう?

汚染され、病気になり、痛めつけられた土地であっても、最後にその土地を救ってくれるのは(責任をもってくれるのは)そこに生き残っている草と微生物です。
みどりが多く、微生物が元気に活動していたなら、土は間違いなく肥えていきます。


「緑が緑を呼ぶ。」
草の下には虫がおり、ミミズやたくさんの微生物がいる。そうすると土は生命に満ち溢れ、どんどん肥えてゆく。地力と生命力がつきフカフカの土になる。
人も緑あるところに集まり、やがて文明を築くようになる。

「有機」栽培とは、自然の仕組みに沿った栽培をおこなうということ。

地球が生命の星であるように、土は生命を宿す土なのです。
一握りでも10億を超える生命がそこにいる。
地球をただの物質と考えてはいけないように、土をただの物として扱ってはいけない。
生命を宿す地球、生命を宿す土なのです。

2018.9.1 井口隆弘

 






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