「10% HUMAN」が意味するもの

〜ヒト・マイクロバイオームの衝撃〜

「10% HUMAN(ヒューマン)」、この言葉のもつ意味は大きい。

私たちが今まで『自分』だと思っていた人間のほとんどの部分が、他の生物の寄り集まりで、人間は「生命の集合体」であるという。体の機能的な部分だけならまだしも、心や、私という人格に至るまで、共同で築き上げてきたものかもしれない。

人の体の中には、100〜1000兆個もの微生物が住み着いている。60兆(37兆とも言われる)人間の細胞の10倍以上。遺伝子の数は330万個、人間の遺伝子(2万5千個)の150倍に及ぶと言われている。
細胞レベルで見たなら、純粋な私自身は5%程度なのかもしれない。

人の健康と幸福は、この自然なる生き物たちの多様性と共生、「共生」のありかた(連携)にかかっている。共に生き、共に幸福を目指している。私とは、「私+腸内細菌」であり、内なる人の声は連携する数多くの生き物たちの声なのである。

『あなたの体は9割が細菌』〜微生物の生態系が崩れはじめた〜という本がある。
著者はアランナ・コリン、原題は「10%HUMAN」と言う。
ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクトの成果として、遺伝子解析技術の向上により、DNAの塩基配列の違いでより正確に微生物の数や種類を判別できるようになってきた。(情報は日々更新されている)

この本が発表された時点(2016.8)において言うと、
あなたの腸には100兆個の微生物がいる。100,000,000,000,000個である。これは地球上の全人口のおよそ1500倍で、それがすべてあなたのお腹の中にいる。菌種別では2000種ほどだろうか。

驚くべき見解が記されているので、一部ご紹介しよう。(以下、部分引用と要約)

あなたの体のうち、人の部分は10%しかない。あなたの体はあなたのものである以上に、微生物のものなのだ。
人の遺伝子の数は、線虫とほぼ同じ、2万1000個。イネやミジンコにも及ばない。
だが、あなたは一人で生きているわけではない。人体=生物種の「集合体」なのである。人体に棲むこれらの微生物を合わせると、遺伝子の総数は440万個になる。遺伝子の数で比べれば、あなたの人の部分は0.5%でしかない。

人はなぜそんなに少ない遺伝子でこんなに複雑な生命活動ができるのだろう?
その鍵は、体内に棲む微生物に多くの活動を「アウトソーシング」(外注)していることにあった。

医学の父ことヒポクラテスは、「すべての病気は腸から始まる」と考えていた。
腸の中に棲む微生物が人の栄養摂取や代謝に関係している。
「あなたはあなたの食べた物でできている」とはよく聞く言葉であるが、同時に「あなたはあなたの微生物が食べた物でできている」とも言える。

>抗生物質の功罪

1944年ノルマンディー作戦で負傷した連合軍の兵士にペニシリンが使われた。
抗生物質が普及した1940年代の10年間を境に、人類はこれまでの倍の時間を生きるようになった。

抗生物質は「命を救う薬」である。人々は、科学の勝利と薬剤の効能に酔いしれた。

しかし、ほとんどの抗生物質は、広範囲の細菌種を殺す「広域抗生物質」だ。多くの細菌が無差別に死ぬ。
抗生物質=大量破壊兵器でもある。
小児に処方される抗生物質の約半数は、乳幼児が患いやすい耳感染症の治療薬だ。
自閉症児の93%が三歳になるまでに耳感染症を経験している。
自閉症児はそうでない子供に比べて三倍以上の抗生物質を与えられていた。抗生物質が腸の細菌を殺し、腸のトラブルを引き起こし、脳にまで影響を与えている。

ニワトリに抗生物質を与えると、成長が50%近く促進されるという。
アメリカでは抗生物質の70%が家畜用に使われている。
家畜の糞は栄養に富んでいると同時に薬も含んでいる。家畜に投与された抗生物質の75%はそのまま糞となって排出される。有機肥料(牛糞・鶏糞)とはそういうもののことだ。
肥料はなるべく使わない方がいい。(無肥料・無農薬)生態系の循環に任せた自然栽培が望ましい。

>21世紀病について

肥満、過敏性腸症候群、アレルギー、自己免疫疾患、自閉症など、20世紀後半から先進国で急増している病気(21世紀病)は、人体内に存在する細胞の90%を占める微生物の様相が従来と変わってしまったことで生じている。

21世紀病に関連するとされた遺伝子バリアント(DNAのスペル違い)の多くは、腸壁の透過性と免疫系の調整にかかわる遺伝子だった。

21世紀病には二つの共通項がある。一つは「免疫系」、免疫系が過剰反応を起こしているということ。もう一つは、「消化器障害」、多くの自閉症の患者は腸のトラブルを抱えている。21世紀病の中心にあるのはディスバイオシス(マイクロバイオータのバランスの乱れ)だ。

うつ病や自閉症、統合失調症の患者には腸の透過性の高まりと慢性的な炎症がみられるケースが多い。
粘液層が薄くなると、あらゆる種類の微生物が腸壁に侵入しやすくなる。

私の子供が幼児だった頃、偏食でまともな便が出ず、「粘液便」と呼ばれる透明のゼリー状のものが出ていた。心配して医者にも聞いてみたが、気に留める人は一人もいなかった。どうすることもできないまま時が過ぎた。腸粘膜の剥離とリーキーガットの症状の進行だと、だれも考えなかったのだろうか?
有害物質は脳にまで到達していたかもしれない。

>母親からの最初のプレゼント

あなたのマイクロバイオータの最初の入植集団は、誕生したときに母親から贈られる「ノアの箱舟」のような各種微生物の詰め合わせなのだ。(微生物一式を母親から譲り受ける)

破水と同時に微生物の入植がはじまる。赤ん坊は産道を通るとき、微生物のシャワーを浴びる。ほぼ無菌状態だった赤ん坊を、膣の微生物が覆っていく。母の膣から健康な微生物の「苗」を植え付けてもらった赤ん坊は、微生物と健全な提携関係を築きつつ人生をスタートする。

帝王切開で生まれてきた赤ん坊は感染症になりやすい。アレルギーや自閉症を発症しやすくなる。
やむを得ず、帝王切開に切り替えた場合は、赤ん坊に膣の微生物を移す工夫が必要である。
膣内をガーゼでぬぐって新生児に塗り付ける方法を採用しよう。(なるべく自然な状態に近づける)

自然分娩と母乳育児は重要なことなのである。

母乳の大部分が各種のオリゴ糖でできている。(130種類ほど)これは微生物の餌になる。
出産直後の数日間に出る「初乳」には数百種の微生物が入っている。
母乳に含まれるオリゴ糖と生きた細菌が、赤ん坊の腸のマイクロバイオータの「苗」を育てる。

>便微生物移植について

アメリカでは、クロストリジウム・ディフシル感染症による死亡者が過去1年で3万人にのぼっている。(エイズによる死亡者数より多い)「耐性菌」によるこの病気は従来の薬では治らない。ただ便移植を行うと劇的に変化する。1度の糞便移植による治療率は80%で、2度目の移植をすると治療率は95%まで上がる。

腸内環境を整えるためによくプロバイオティクスが使われる。便移植はどうだろう・・・
つきつめれば、プロバイオティクスと糞便移植にそれほど大きな違いはない。どちらも有用な微生物を腸内に届けるという考え方だ。

重度の自閉症児や統合失調症、強迫性障害の患者などに便を弄ぶ行為がみられたりする。
自然界では、「食糞」は異常行動でも何でもない。病んだ動物が自分のディスバイオシスを正すための適応行動だと考えられる。ただ単に、健康な菌が欲しかったのである。

今後、「微生物生態系治療」と言う新しい領域が注目されてゆくだろう。

生命を取り込むということは「遺伝子」を取り込むということ。
微生物の群れ(糞便)から、あなたが受け取るのはその中にある遺伝子だ。身長や体重、寿命にさえ貢献する遺伝子、あなた自身の遺伝子に混ぜられて補完される遺伝子、健康と幸福につながる遺伝子である。

>マイクロバイオータは私の一部

私は人体に棲む微生物のことを調べるうちに、自分自身を独立した存在として考えるのをやめ、マイクロバイオータの容器だと考えるようになった。私自身とマイクロバイオータはまとめて一つの「チーム」なのだ。

マイクロバイオータはある意味、一つの臓器だ。人体の中にあって健康と幸福に寄与する臓器である。(約2sあるから肝臓と同じサイズ)

人体には自分のほかに100兆個の細胞と440万個の遺伝子をもつ微生物がいる。彼らと共に進化してきた私たちは、彼らなしでは生きてゆけない。

以上がこの本の主要ポイントである。

繰り返しになるが(本当に、びっくりしている)、人間は「生命の集合体」である。
私は、私一人ではなく、私たちであり、体の機能や心の動きに至るまで、私と微生物が共同で作り上げているものなのである。その影響というものは知れば知るほど大きいことがわかる。

私は、私だけではなかったのだ。人間は宿主であるがゆえに、居住者の微生物によって守られており、細菌によって生かされている。その共生関係が崩れれば自滅するしかない。人は人としてのベストを尽くすが、人の幸福は彼らの手にもかかっている。

私たち人間は、宿主として10%のベストを尽くして、人の内なる生態系を管理し、共生と連携を守り、集合体としての人間を方向づけてゆく舵取りを行わなくてはいけない。そういう役割がある。人間が100%の力を発揮するためには、彼らの力が必要なのだ。

「除菌だ、殺菌だ」と言って騒いでいる人たちは、自分自身に刃を向けて小さな無数の命を絶ってゆく行為を奨励しているようなものである。自分で自分を病気にして、さらに環境も破壊してゆく、質の悪い存在なのだ。共生を阻害する除菌や殺菌行為は、健康を害し人格を蝕む、自滅への道なのである。
抗生物質の使用は、免疫が及ばない場合はやむを得ないが、何事も行き過ぎはよくない。(他の生き物のことも考えるべきである)極端に神経質な人は害をおよぼす場合がある。菌との共生はバランスが大切なのだ。
自己の9割が細菌でできているというのに、「菌を殺せ、菌を殺せ」と言うのは、あまりに無知というか、違和感を覚える。

抗生物質は「両刃の剣」、使い方を誤ると自身にダメージが及ぶ。
剣術では、無刀の剣(人を生かす剣)が一番優れているのと同様、菌を殺さずに菌を生かすのが優れた健康法である。
ともかく、意図的にでも菌(微生物)を取り込み、保護し、共生する。人体の中に生態系を築き、多様性を維持し、バランスを保って、彼らの楽園を築く。そうすればきっと、私自身においても何かいいことがもたらされるだろう。

生まれてきた赤ちゃんは、お母さんの菌に包まれて、「菌のゆりかご」の中で過ごすのが一番。
お母さんの肌に触れ、母乳を飲む。(乳房をアルコール消毒する必要などない)

生まれてから約1年の間に、いかにして体の中に「生態系」(自然)を築き得るかが重要。だから赤ちゃんは一生懸命菌を取り込もうとする。生後1年から3年でその子の定着菌(腸内細菌叢)がほぼ決定してしまう。(指紋のように一人ひとり異なる)、その菌たちは生涯の共生するパートナーとなる。

○ 私は自然

私は何なのか?
私が私だと思っていた私の体、私の心は、90%微生物のものだったのかもしれない。
私は「私+微生物(腸内細菌)」なのだ。本当の(純粋な)私は、わずか10%。この事実は人を謙虚な思いにさせ、感謝とともに新しい理解へと目を開かせる。

この地球上には、10の30乗に及ぶ菌がいる。重さにすれば人類の総重量の1000倍にあたる。

私は自然。私の中には生態系がある。自然には、内なる自然と、外に広がる自然の二つがある。自分の中に自然(円滑な生態系)を築き上げてゆくことが大切。多様性とバランス、共生と循環。私の中の自然は一つの意志としてあらわれる。やがて、私の外の自然とも一つとなる。

古来、日本人は自然を神として仰いできた、(自然の中に神を感じてきた。)
「10% ヒューマン」ならば、残りの90%は自然。つまり、90%を自然=神の御手に委ねるということになる。

私とは何者か? 純粋な私など存在しない。すべては連携して存在しているので、単独、一人というものはない。私は生命の集合体であり、私の想いは私たちの想いであり、私の意志は私の中にある自然の総意なのである。つまり、私は自然であり、すべての自然と繋がっており、神とも繋がっている。
だから、「私=自然=神」ということになり、大きく見たなら(究極的には)一つなのである。

○ 私は「公」である。

みんなのことを考える、みんなのために生きる、「公」という原則は、正義とか善意という大袈裟なことではなく、当たり前のことなのかもしれない。だって、私自身が「公」なる存在(生命の集合体)なのだから・・・
みんなの為に生き、私たちは一つなのです。私たちは無数の生命の集合体なのです。

個人においても「公」の意識が必要。自己中心では自分の健康すら維持することができない。自分中心ではなく、腸(細菌)の喜ぶ生活をしよう!
人を幸せにするためには、また自分が幸せになるためにも、「為に生きる」こと、公的な意識、思いやりの心が必要なのです。

もう一つ重要なことは、「脳腸相関」ということ。
腸内細菌は、人の気持ちを左右する。人間には「第二の頭脳」というべき臓器(腸)があり、その腸に住む細菌が人間の心の重要な部分を支配しているということである。自分の心だと思っていた想いや感情が、微生物との共生の結果として生じているものであることがわかった。人の幸せや平安は、微生物との関係なくしてあり得ないということである。微生物との出会いは、その人の人生を変えるかもしれない。

○ 腸内細菌は元を正せば土壌菌

腸内細菌はどこから来たのか?
元を正せば土壌菌だ。その中でも有力なのは、土づくり担当のミミズの腸内細菌である。ミミズの腸は、土壌細菌の宝庫と言ってもいい。ミミズの腸内細菌はすごい!
ミミズは肥沃な土をつくり、人間の90%をしめる腸内細菌を育んでいる。

人間に最も大きな影響を与えているのはミミズであり、私は実はミミズだったりするのだ。(ほとんどが、ミミズの生産物)おなじDNAを持つ微生物を共有している。誰かミミズの腸内細菌とその中にあるDNAについて調べてくれないだろうか?

あなたの体の(心も)何割かは、ミミズが作っているのかもしれない。
体の9割は腸内細菌。その菌は元を正せば土壌菌。土づくりはミミズの担当。土壌菌の多くはミミズの腸の中にいた。だから、あなたの多くの部分は、もともとミミズの腸の中あったものなのかもしれない。
生命のつながりに想いを馳せれば、ミミズの腸の中の菌にまでたどり着く。
人と自然と神との関係は、どこまでも密接で、深く、究極的には一つである。

神は人間を創造するにあたって、ミミズの中の細菌のDNA情報まで緻密に計算し、自然生態系の中で生かされるように設計された。単独で生きるのではなく、ネットワークで繋がり合って、できないことはアウトソーシングしながら、一つの大きな共生体として宇宙が回るようにしているのである。

人間は90%の他者のことを考えなくては生きてゆけないのである。
幸せは共生する中で生じてくるものなのである。

〇 自然な畑の中で

話がすっ飛んだ内容になってきたので、畑に戻りましょう。
野菜はあまりゴシゴシ洗う必要はありません。(農薬たっぷりの野菜は別ですが・・)
自然のものはそのまま食べることができます。特に土に接する皮の部分は大事です。サッと水洗いするだけで皮ごと食べましょう。食べ物といっしょに土壌菌が取り込まれ、腸内細菌の多様性に繋がります。

ヒトは食物繊維のセルロースを分解する酵素を持ち合わせていません。
野菜が食べられるのは、微生物の酵素があるからです。彼らが食べた物を私たちは吸収しています。
腸内フローラの整っていない子は、決まって野菜嫌いですし、偏食です。アレルギーも多いです。能力がないのですから当然のことです。(菌と酵素が必要なのはコアラだけではありません)腸内細菌叢が豊かになれば、なんでも食べるようになります。

発達障害というのは(21世紀病の多くは)、ひょっとすると『体内生態系(体内自然)形成遅滞症』なのかもしれません。(勝手に私が命名しました)

畑の中で土に触れ、「自然」の中で過ごしましょう。
そうすれば、少しはその自然が自体内にも取り込まれ健康に近づいてゆくような気がします。だから私たちは「しあわせ農園」(自然共生農園)に足を運ぶのです。

2020.5.31 俊邦父


注意事項:この文章は、私個人における見解であり、人に何かを強要するものではありません。
自然には厳しい側面(生存競争)があり、微生物の数は無数に存在します。共生していても効果がある場合と、リスクをもたらすこともあります。人それぞれケースが異なります。参考にされる方は、ご自身でよく勉強し納得したうえで、自己責任で活用して頂ければと思います。自然と仲良く、健康に過ごすための一助となれば幸いです。

 参考・引用させていただいた書籍です。

「あなたの体は9割が細菌」  アランナ・コリン

「失われてゆく、我々の内なる細菌」  マーティン・J・ブレイザー

「腸と脳」  エムラン・メイヤー

「土と内臓」 微生物が作る世界  D・モントゴメリー