バイオメディカルによる自閉症治療の可能性
〜自閉症の栄養療法とデトックス〜

 2000年頃、子どもが「自閉症」の宣告を受けても、日本では「治療」という選択肢はほとんどなかった。
自閉症は障害だから治らない。障害特性を理解し療育を行う。関係性や接し方を重視し、心理学をベースに教育やトレーニングを行う。症状がひどくなり、どうしようもなくなったら物理的な構造化で対応したり、抗精神病薬で抑え込んだりした。脳の障害であると認めながら、脳の機能を回復させる直接的な(生物学的)アプローチはしない。
もちろん人を育てるのに対人関係は大切である、しかし、大切な生体に関わること、脳自体については触れず、見ようとせず、“目隠し”をされているようであった。

しかし、欧米は違っていた、異端視されながらもはっきりと自分の意見を主張する。治療する可能性を求めて、根本である生物医学から探求し、生体を形づくる栄養学やDNAの研究、有害な化学物質や重金属があるならば、そのデトックス方法を考えた。自閉症カンファレンスでメインテーマになるのは、バイオメディカル療法である。(それが日本に伝わることはほとんどない。)

日本は、「情報鎖国」と呼ばれたりする。
排他的・閉鎖的で、熱心な親御さんが海外から情報を集めて公開したとしても、ネットで袋叩きのようにされた。組織の中でも受け入れられることが少なく、気の毒なほど傷ついて姿を消し、密かに情報を共有し、影で活動するしかなかった。古い体質や習慣、集団の心理で自分たちだけが正しいと思い込み、他を寄せつけない。どれだけ多くの子どもたちや親御さんたちが、治療の機会を失ったことだろうか。今でも、バイオメディカルの分野に関しては、日本は20年くらい遅れているような気がする。

愚痴をこぼすのはこれくらいにしておこう・・・

でもようやく近年、「分子栄養学」「分子整合栄養療法」(オーソモレキュラー)の進展とともに、自閉症(発達障害)に対しても栄養療法が有効であるという見解が増え、本も多く出版されるようになってきた。喜ばしいことである。
日本で分子栄養学の基礎を築かれた三石巌先生の功績は大きい。資料を提供した保護者の皆さん。そして、自閉症の治療に栄養素が有効であることを書いた著者たちの勇気を讃えたいと思います。

栄養療法

自閉症の治療において基本となることは、あたりまえのことではあるが、まず正しく「栄養」を摂ることである。体も脳も栄養素(食べたもの)でできているのだから「栄養療法」が基本となります。生命活動には栄養が必要です。脳の発達にも栄養がいるのです。

分子生物学の視点から見ると、福岡ハカセ(福岡伸一先生)がおっしゃるように、生命は「流れ」の中にあります。『動的平衡』を保つために、常に栄養素を補給しながら代謝を進めてゆかなくてはなりません。1年後の自分は、分子レベルで見れば細胞やその中身が入れ替わった全く新しい存在なのです。

  1. 「タンパク質」
    その第一に必要な栄養素は、その名の通り「プロテイン」(タンパク質)です。
    語源は、古代ギリシャのことばで、“プロテイオス”という言葉から来ていて、意味は「第一のもの」「もっとも重要なもの」ということ。
    生命体のほとんどがタンパク質でできています。20種類のアミノ酸を含む、バランスのとれたプロテインを毎日しっかりと摂りましょう。(動物性の肉や卵、大豆やナッツ類など)
    不足分があればホエイプロテインなどを飲みましょう。(体重の1000分の1が目安なので、50キロの人で50g。朝夕20gずつホエイプロテインを摂れればいいですね。)プロテインが十分摂れていれば、体もしっかりして疲れにくくなり、頭脳も明晰に、精神的にも安定します。体作り(脳も)の基本です。

  2. 「ビタミン」
    ビタミンは代謝に必要な補酵素です。ビタミンなしでは重要な神経伝達物質も体内でつくれません。ビタミン
    B群、ビタミンC、ビタミンE、そしてビタミンDなどが必要です。
    特に精神を安定させる(心を落ち着かせる)調整役の神経伝達物質セロトニンを生成するのに必要なビタミン
    B6は重要です。ビタミンB-50コンプレックスやビタミンC1000を食事の度にとりましょう。

  3. 「ミネラル」
    筆頭にあげられるのは「鉄」です。
    酸素を運ぶ血液のヘモグロビンの機能は鉄のよるものです。鉄が欠乏すると、酸素がうまく供給されず、燃焼エネルギーを得ることができませんので、ふらふらになります。鉄は全ての生命に必要なものです。血液検査で、貯蔵鉄の量を示すフェリチン値が100ぐらいになることを目指して補給してゆきましょう。
    ミネラルのバランスは精神に大きく影響します。イライラや不安、癇癪、ハイテンションなどもミネラル不足によってよく引き起こされます。鉄の他にも、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セレニウムなどを摂りましょう。

  4. 「良質な脂質」
    細胞は油の膜によって形づくられ、守られています。脳には脂肪が多く、脳の機能にも大きく影響します。必須脂肪酸を補給しましょう。植物油よりもバターやラードが良いです。(人間は動物のなかまだから動物性の食品の方が相性がいいのです)トランス脂肪酸(マーガリンやショートニング)は“狂った油”と呼ばれます。とらないようにしましょう。オメガ3の油
    n-3系脂肪酸)を摂りましょう、α-リノレン酸、亜麻仁油やエゴマ油など。特に重要なのは青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)。血液脳関門を通過し、脳の炎症を鎮め、シナプスの働きを向上させます。

  5. 「腸内環境」を整える
    『脳腸相関』と言われるくらい、脳と腸は密接な関係があります。
    腸は栄養を取り入れる器官であり、有害物質から身を守る免疫機能の最前線でもあります。多くの微生物と共生し、その関係は神経系や免疫系に影響を与えます。発酵食品(野沢菜の漬物やキムチや、味噌汁など)を食べ、プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)、オリゴ糖などを補給し、善玉菌を増やしましょう。
    人間は生命の集合体。良好な生命の共生関係を築きましょう!それが健康のみならず自然や環境(地球環境)にも繋がってゆくのです。

    自閉症の方は腸にトラブルを抱えている方が多く、グルテンやカゼインによる問題についてよく耳にすると思います。牛乳に含まれるカゼインは分解されにくく、腸管壁を傷つけることがあります。(有害物質侵入の原因、リーキーガット症候群)小麦に含まれるグルテンも食物アレルギーを引き起こしやすいです。グルテン・カゼインを分解するDPP-4という酵素の働きが重金属(水銀などの有害物質)によって阻害されているとも言われています。
    GFCFダイエット」をされる方もいます。それだけで落ち着く場合もあります。牛乳は控えめにしましょう。(無理に飲ませない。小魚でカルシウムを摂る)
    ただ、あまりにも厳密にやると食べるものが少なくなり、しんどくなります。食を「楽しむ」ことも人生の大切な要素です。ほどほどにしましょう。(甘いかな?)

以上の基本的な「栄養療法」で、改善がみられることもあるようですが・・・

自閉症は、それほど単純なものではないようです。質的な栄養失調は改善し、確かに健康には近づきますが、脳に異常をもたらす根本的な原因は他にもありそうです。

自閉症(発達障害)は一ヵ所の遺伝子のみが原因となる一因子疾患ではなく、遺伝と同時に環境を含む複数の要因があって引き起こされる多因子・多遺伝子疾患ではないかと言われています。
2003年にヒトゲノム配列は全て解読されて、自閉症の原因遺伝子が発見されるのではないかと期待されましたが、そのような決定的な一因子の遺伝子は発見されず、しかし、自閉症関連遺伝子は1000を超えるほどリストアップされました。

2011年、自閉症などの発達障害は遺伝子要因が約37%、残りの63%は環境要因だという研究発表がなされました。“なりやすさ”を決める遺伝要因が背景となって、環境要因が関わり発症する。というのが現在の自閉症に対する理解です。環境要因の方が大きいのです。遺伝子を変えることは困難ですが、環境を変える(栄養補給やデトックスを含む)ことは可能です。

人−自然−環境は繋がっています。生命は循環する「流れ」の中にあります。
繋がりの中にあるということは、それらを「一体」(生命と自然環境は一体)のものとして考えなくてはなりません。

環境因子の一つとして挙げられているのが、体内に蓄積された有害な「重金属」の影響です。
環境には水銀や鉛、カドミウム、ヒ素、アルミニウム、PCBなどが溢れています。どれも脳神経系に影響を与えます。(特に、メチル水銀は脳神経への毒性が強い)食物連鎖による水銀の生物濃縮(高位の生き物ほど濃度が高くなる)も心配されています。

発達障害は、氾濫する環境化学物質によるものであるとも考えられています。特に、「農薬」(殺菌剤・殺虫剤・除草剤など)による人体への害は大きく、生命や生態系を危険にさらしています。現在、日本でも多用されている有機リン系農薬、ネオニコチノイド系農薬は、浸透性・残留性が高く、脳神経系や免疫系に影響を与え、虫や植物だけでなく、全ての生き物にとって有害です。殺虫剤は生き物を殺す殺生剤(バイオサイド)なのです。

1990年代から世界各地でミツバチの大量死事件があって以降、にわかにネオニコチノイドが発達障害の原因ではないかと言われるようになってきました。ネオニコチノイドは虫も人間も共通している神経伝達物質アセチルコリンやニコチン性受容体をターゲットにしている神経毒です。
日本と韓国は特に使用量が多く、棒グラフにして比較すると、発達障害の発症の増加と酷似しています。

人はよく「エビデンスを見せろ!」といいます。自分に少しでも不利益があると、容易には信じず、動こうとはしません。(仕事を増やすのは嫌だし、お金がかかることや、面倒なことはしたくありません)しかし、気楽に言っていられるのは当事者ではないからです。(親や本人は違います)

最も恐ろしいのは『複合汚染』(複合的な影響)というものです。
有害物質は環境に溢れています。地球環境全体においてここ40〜50年の間に、約10万種類、10万トンの合成化学物質が放出されました。その組み合わせは無限にあります。農薬においては、原体で約500種以上が登録されており、商品の種類は数千に及ぶと言われています。その一つひとつの組み合わせによる人体への影響や相乗作用を検証してゆくなどということは、不可能に近く、とてつもなく時間がかかります。
日本の環境省で行われつつある初歩的な「エコチル調査」でさえ、10万人を対象に2011年から開始され、結果が出るのは21年後の2032年です。(それで、どれだけのことが判明するのか?)
それまであなたは何もしないで待つのでしょうか? 目の前に有害物質があるというのに・・・

我が子が、今、障害で苦しんでいるのです。100年待って時間を失えば、人生終わっています。疑い出せばきりがない。何もできなくなってしまいます。地球環境の問題と同じで、今できることを精一杯することが大切なのです。

最近話題になるマイクロプラスチックにおいても、その素材自体の毒性もさることながら、海水中で有機塩素系農薬やPCBなどの有害な海洋汚染物質を吸着しやすく、海水の数万倍に濃縮されることがあり、「複合汚染」が恐れられているのです。

怪しいと思われる有害物質は、遠ざけた方が無難です。
まずは、体内に農薬をはじめとする有害な合成化学物質を取り込まない。(食べない、触れない、吸い込まない)そして、蓄積されているものがあるとするならば、可能な限りデトックスを行う。使用するのは、基本的に体に害のない(副作用の少ない)サプリメント(栄養補助食品)です。健康法の一つとしておこないます。
結果や効果は、いちばん子供たちのそばにいる親たちが肌で感じることでしょう。子どもたちの変化を見落とさないようにして下さい。(もし、悪化するようならすぐに中止し、医師に相談してみましょう)

ではここから、今回の本題であるデトックスについてお話してゆきます。

怪しいと思われる物質の危険性を一つひとつ消し去ってゆきましょう。
欧米では、栄養療法とデトックス(解毒)の2本立てで、両面からアプローチしてゆくことが多いです。

重金属の中で最も恐ろしいのが、やはり「水銀」Hg(マーキュリー)です。
体内に蓄積すると、中枢神経系に対し強い毒性を示します。水銀で思い出すのは、子どもの頃よく擦り傷につけた「赤チン」マーキュロクロム液、水銀が入っているので乾くとテカテカと光った。あと、水銀体温計や水銀灯、歯の詰め物として使用するアマルガム、ワクチンの防腐剤としてのチメロサールなどです。
知らず知らずのうちに使っていました。

脳に蓄積してしまうと、「関所」とも呼ばれる血液脳関門がありますので、なかなか排出が難しい。欧米では、医療用のEDTA、DMSA、DMPSなどを使ったキレーション療法が行われますが、日本では専門医がいなくて難しく、経口内服のサプリメント(栄養補助食品)で比較的安全に使用できるものとしては「α−リポ酸」があります。
毛髪ミネラル検査やオリゴスキャンなどのミネラル(有害金属)検査で数値が高かった場合は、検討してみてもいいかもしれません。

α-リポ酸によるデトックス

α−リポ酸は「チオクト酸」と呼ばれる物質で抗酸化作用が強く、糖尿病の合併症や強肝、肉体疲労回復、アンチエイジングなどに使われます。微量ながら生体内にも存在する物質なので安全性は高いと思われます。

特に注目すべき効果は、

  1. 抗酸化作用:ビタミンCの400倍とも言われる抗酸化力。グルタチオンに働きかけ、ビタミンC、E、コエンザイムQ10などを再生させ、強力な“抗酸化ネットワーク”を築きます。

  2. デトックス作用:水溶性と脂溶性の両性質を兼ね備えているがゆえに血液脳関門も通過でき、脳内でデトックス効果を発揮できます。分子構造の中にイオウSが2カ所あり、それが「カニの爪」のような働き(キレート結合)をして重金属を挟み込み、体外へ排出します。

α-リポ酸でデトックス(キレーション)する場合の注意点をいくつかあげておきます。

  • ポイントは、α-リポ酸の血中濃度をなるべく一定に保つこと。
    デトックスをスムーズに行い、再分配・再定着を防ぐ為。服用間隔を短めに、3〜4時間おきにするのが望ましい。

  • α-リポ酸の量は少量に分けて服用すること。就寝前や、空腹時に飲むのが効果的。
    一般に、一日の服用量は100〜200mgだが、これを5〜6回に分けて(カプセルの中身を分ける)、1回20〜50mgくらいずつ、少量をきれいな水に溶いて食間に服用させる。(お子様の場合は、体重比を考慮に入れて量を決める)

  • 解毒というのは、毒素(水銀)が体の中を移動することになるので、それなりの酸化ストレスや影響が現れる。
    毒素(水銀)が動くことによる症状:テンションが上がる、声が出る、こだわりを繰り返す、寝付けない、イライラするなどが起こりえる。

  • ONとOFFの期間をもうけ、休息と回復の時間をとること。
    たとえば、3日‐ON、4日‐OFFくらいで1セット、それを1〜数週間おきに行うなど。(重金属の蓄積が少ない方は、毎日飲んでもそれほど影響はないようです)どうしても気になる方は、一定期間試してみましょう。

  • 体調を維持する為、ビタミンやミネラルなど「基本サプリ」を服用すること。
    ミネラルを排出した後には、セレンや亜鉛、鉄など必要なミネラルを補給す
    る必要があります。

※ 詳しいことは、自己責任においてしっかりと勉強し、ご自身で納得した上で実行して下さい。できれば医師のサポートなどを受けながら、無理のない範囲で行ってください。年齢や障害のタイプも考慮に入れながら、適切な対応を行って下さい。子どもの様子をよく観察しながら、柔軟に対応することが大切です。

「扁桃体」などの神経細胞に影響する有害物質の負担が軽減されると、ニューロン・ネットワークが正常に機能して、感情表現が豊かになり、笑ったり、喜んだり、悲しんだり、今までなかった表情を見せたりします。同時に、ビタミンB6の服用を行えば、セロトニンが増え、落ち着きを取り戻し、こだわりが軽減します。
扁桃体は、喜怒哀楽などの情動にかかわる、感情をキャッチする神経中枢です。

「ミネラルバランス」によってデトックスする方法

デトックスの基本サプリは、α-リポ酸、亜鉛、セレニウムと言われています。
3つ組み合わせて交互に服用すると、デトックス効果がアップします。

亜鉛が不足すると、味覚障害や生殖機能の減退、精子の数が減少します。これは不妊症に繋がり、男性にとっては重大です。

ミネラルは体内において干渉し合うことがあります。鉄と鉛、亜鉛とカドミウムは拮抗関係にあります。体内において、どちらかの比率が増えれば、他方が少なくなるという関係です。同じように、セレニウムと水銀・カドミウムの間にも拮抗関係があります。セレニウムには、水銀と結合すると、水銀の毒性を減らすという働きもあるそうです。

鉄 → 鉛・アルミニウム
亜鉛 → カドミウム
セレニウム → 水銀

このように、間接的ではありますが、「拮抗ミネラル」を利用して、体内のミネラルバランスを正常化してゆくという、デトックスの方法もあります。

DHAのデトックス効果

脳の乾燥重量の60%は脂質が占めています。脳の神経細胞やグリア細胞を覆う細胞膜の“しなやかさ”の度合いは、不飽和脂肪酸(柔らかさを与える)の量で決まります。脳内の不飽和脂肪酸では、DHAが17%、アラキドン酸(ARA)が12%と多く、これらは栄養学的には「必須脂肪酸」と呼ばれています。

DHAは主に神経新生、シナプス形成、神経細胞の分化、神経突起伸長、膜流動性の維持、抗炎症作用、抗酸化作用など、脳機能を維持する為の重要な役割を担っています。自閉症の方には、ぜひとも飲んでいただきたいサプリの一つです。

DHAは血液脳関門を通過できます。そして、細胞膜に含まれるDHAの濃度が上がると、グルタチオンの活性が向上します。グルタチオンには解毒や抗酸化の作用があるのです。ということは、食事やサプリメントによってDHAを補給すれば、(特に自閉症の方には)農薬や環境ホルモン、重金属の「解毒」が促され、症状の緩和に役立つと思われます。

天才学者アインシュタインの脳は、脂肪を多く含む「グリア細胞」の数が、突出して多かったという研究発表がありました。脳の機能の差はオイルの差だったのかもしれません。
(たとえが悪いかもしれませんが)車の場合、高性能のエンジンには新しいオイルを入れるべきです。古いオイルのままだとエンジンにトラブルが生じます。オイル交換をすると真っ黒な油が出てきますね。デトックスのようなものです。老廃物と共に有害物質も排出されます。人間も、脳が良いパフォーマンスを行うためには、定期的なオイル交換(?)が必要なのかもしれません。とにかく、
DHAを補給しましょう!

農薬と発達障害

1962年、レイチェル・カーソンは、著書「沈黙の春」により、DDTBHCなどの有機塩素系農薬やPCBの危険性を指摘しました。企業や保守層からは激しく批判されましたが、本を読んだJ・F・ケネディ大統領の指示により毒性検査が行われ、その結果、製造中止になりました。

その後、有機リン系農薬が開発され、マラソン・パラチオン・フェニトロチオン(スミチオン)などが多用されています。有機リン系殺虫剤は、アセチルコリンの分解酵素を阻害します。発達過程で、有機リン系の農薬に曝露すると、子どもたちはIQの低下や脳の発達の遅れ、ADHDや発達障害を引き起こしやすいと言われています。また、毒性が強いサリンやVXガスなどは軍事用に毒ガス兵器としても使用されました。

1996年には、シーア・コルボーンによって「奪われし未来」という本が出版され、環境ホルモンのことが話題になりました。環境ホルモンとは、環境中に含まれているホルモン攪乱作用を持つ化学物質のことです。不妊症が増え、男性の精子数が減少していること、草食系男子が増えてきたことにも影響しているのかもしれません。

2008年、米ジャーナリスト、ローワン・ジェイコブセンが「蜂はなぜ大量死したのか」という本を出しました。その後、「ネイチャー」や「サイエンス」などの科学誌でも取り上げられ、ネオニコチノイド系の農薬に曝露したことにより蜂は大量死したのだという結論に至りました。蜂群崩壊症候群(ほうぐんほうかいしょうこうぐん)と呼ばれています。

ネオニコチノイドやフィプロニルは、浸透性・残効性・神経毒性が高いのが特徴です。水溶性なので、播いた植物の内部に浸透し、成長後もその植物の葉・茎・果実に農薬が残留しているので、害虫がどこをかじっても殺虫効果があり、虫たちは死んでゆきます。浸透性なので、残留した殺虫剤は洗い落とすことはできません。農家は農薬をまく回数が減り楽になるということで、ドローンなどを使って空中散布したりもします。

ネオニコチノイドは、神経伝達物質アセチルコリンの受容体、ニコチン性受容体に“偽伝達物質”として過剰な興奮作用をもたらし、毒性を発揮します。神経毒です。
分子レベルで見ると生き物の基本はあまり変わりません。害虫だけでなく、細菌や植物、人間を含む高等動物に至るまでアセチルコリンは重要な生理活性物質です。ネオニコチノイドは脳神経系をターゲットにしており、発達障害(自閉症)を引き起こす原因物質として、今、一番疑われているものです。

類似した作用を持つフィプロニルは、神経伝達物質GABA系の伝達を阻害します。これも神経毒です。
人間に全く作用しない安全な殺虫剤などありません。

身近にあるネオニコチノイド系農薬(成分・商品名)→ neonicotinoid.pdf

ネオニコチノイドへの対処法

自閉症の子どもにレシチンを服用させると、多動が治まり、落ち着いて授業を受けるようになったという話があります。レシチンに含まれるコリンは、アセチルコリン生成の材料になります。これは私の推測でしかありませんが、「レシチン」には、農薬(ネオニコチノイド)によって攪乱されたアセチルコリンの作用を回復させる効果があるのかもしれません。偽物ではなく本物ですから・・・

除草剤に関すること

<現在よく使われている主な除草剤>

ベトナム戦争の枯葉作戦で使用された2,4−D(によんディー)は、製造過程でダイオキシンが混入し多くの奇形児が生まれました。(モンサント社が製造)

環境ホルモン作用が確認されているシマジンは芝用に使われています。
遺伝子組換作物と組み合わせて開発されたグリホサート(モンサント社、「ラウンドアップ」)は発癌性や発達神経毒性、生殖毒性が疑われています。
グルホシネートは興奮性神経伝達物質、グルタミン酸とよく似た化学構造を持っていて、ラットに投与すると激しく咬み合うなど攻撃性を増します
除草剤パラコートは、ミトコンドリア機能障害による毒性が強く、パーキンソン病の原因因子になることが判明しました。

2015年 国際産婦人科連合が公式見解を発表
「農薬、大気汚染、環境ホルモンなどの有害な環境化学物質の曝露が流産、胎児の発達異常、がんや自閉症などの発達障害を増加させている。」

数多い農薬に対する解毒方法は、今後さらに研究を進めてゆかなくてはならないと思いますが、そもそも、生き物を殺傷する農薬など使わず、自然と共生する道を選べばいいのです。人間に全く作用しない安全な殺虫剤などありません。(人間も同じ生き物の仲間です)

無農薬・有機栽培を実践されている方々もいます。
施設や市町村によっては、子どもたちを農薬の危険性から守るために、給食に有機野菜を使い、その結果、発達障害の症状が軽減されてきているという報告もあります。
生命を大切にし、自然と共生する道を選び、地球環境を守るという活動を広めてゆきたいものです。
障害者とともに「自然共生農園」を実現してゆくことは私の夢でもあります。

ニューロン・ネットワークを回復させよう!

子どもの発達期において、有害な環境化学物質が脳内に侵入すると、遺伝子発現が攪乱され、正常なシナプス形成や神経回路形成ができなくなります。

生き物の基本は、DNAの遺伝情報を生命の設計図として、それを発現し、20種類のアミノ酸が組み合わされ、タンパク質によって生体が形づくられていきます。生命の根本原理(セントラルドグマ)とも呼ばれる、『遺伝子発現』の道筋をたどって行くのです。

DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質 という経路です。
RNA(リボ核酸)の情報をアミノ酸配列として翻訳し、材料であるアミノ酸が酵素タンパクとサポート役のビタミン&ミネラル(補酵素)によって生合成され ⇒ タンパク質(目的となる生体のパーツ)となります。

そして、基本的な生命活動を行うにあたって使われるホルモンや神経伝達物質は、ほとんどの生物において共通か類似したものです。

脳の働きは、神経回路網(ニューロン・ネットワーク)によって決まります。
脳にはおよそ1000億個のニューロンがあり、約100兆個のシナプスによって結合され、神経ネットワークを形成しています。一つひとつの脳神経細胞も大切ですが、脳の機能を担っているのは、脳神経回路網(ニューロン・ネットワーク)なのです。ですから、ニューロンとニューロンのつなぎ目、シナプス結合が正常に行われているのかが重要なのです。5万分の1mmと言われるシナプス間隙において、必要とされる神経伝達物質が供給され、正しく情報を伝達できているかが鍵になります。

自閉症は「シナプス症」だと言われています。

他者を理解できない、気持ちが伝わらない・・・というのは、情動を司る「扁桃体」を中心とする神経ネットワークに不具合があるのです。
私たちが今注目しているのは「シナプス」です。そしてシナプスが繋ぎ合わされることによってできる神経回路網によって、脳の機能が決まると考えているのです。

ヒトの脳は約1000億の神経細胞でできていますが、まだ10%くらいしか使用されていません。(予備がたくさんあるということ)ネットワークを正常に繋いでゆけば、後天的にも脳機能を回復させ、発達を促進させてゆくことは可能ではないかと思われます。 「療育」もそういう意味では、外部から刺激を与えて、脳神経ネットワークを活性化させる役割を果たすのではないでしょうか。

シナプス結合を阻害するような汚染物質は除去(デトックス)できると良いですし、神経伝達物質が正しく生成され機能するように、必要な栄養素は補給しましょう。

神経伝達物質とその受容体をターゲットにするような神経毒(農薬)は拒否してゆかなくてはなりません。その為に、無農薬・有機農業を進めて、自然との共生を図ります。人間をはじめとする生き物たちの生命を守り、共生し、地球環境を守ろうとしているのです。これが、私が有機栽培・自然農法をつづけてゆきたい理由です。

「自然共生農園」を目指したいのです。

有機・自然農法による野菜づくりを通して、ミネラルが豊富でビタミンなどの栄養価の高い野菜づくりを行い、質的栄養失調の問題を解決し(本来の食生活を取り戻す)、有害な化学物質から子どもたちを守り、自然との共生の道をさぐり、地球環境を守ろうと思うのです。ほんとうに夢のような話ですね。

一人ではなかなかうまくいきませんが、きっと同じように考える仲間たちがどこかにいるのではないでしょうか・・・もし、おられましたらぜひ声をおかけ下さい。

2019.10.14 俊邦父


「私たちが住んでいる地球は自分たち人間だけのものではない――この考えから出発する新しい、夢豊かな、創造的な努力には、《自分たちの扱っている相手は、生命あるものなのだ》という認識が終始光かがやいている。」

〜レイチェル・カーソン「沈黙の春」より〜

 参考・引用させていただいた書籍です。「分子栄養学とオーソモレキュラー関連書籍 U」
詳細については、ぜひこちらの本で勉強してみましょう!