ニューロンと神経伝達物質の働き

〜5万分の1mmのドラマ〜

脳は1000億のニューロンの集まりです。
ニューロン(神経細胞)のネットワークによって機能します。

私たちは、子供の脳を割って、脳みその悪いところを確認するような作業はできません。
しかし今の時代、科学によって脳の仕組みは学ぶことができます。DNAの解読も進んできています。脳の機能を左右する、1000億のニューロンの隙間で起きている、神経伝達物質の働きに着目することはできます。そして、人間の脳や伝達物質がどのような栄養素で、どういった経路で生合成されるのかも解明されています。やるべきことはあるのではないかと思うのです。

神経伝達物質(メッセージ物質)は約100種類。その過不足が心(精神)の状態に大きく影響しているのは、ほぼ間違いありません。例えば、心を安定させ、調和をもたらすセロトニンやGABAは、パニックや発作、行動障害にも効果がありそうです。

体内における、メッセージ物質の生合成には、人によって個人差があります。必須アミノ酸を含むタンパク質やビタミン、ミネラルの必要量が異なるのです。
GABAやセロトニンを生合成する為には補酵素として、ビタミンB6や鉄分が必須です。ストレスによってもビタミンの必要量は変わります。

また、栄養素を吸収すべき「腸」の状態も重要です。さらに人体(脳神経)に悪い影響を与える有害物質(農薬などの化学物質)の侵入も考えられます。アレルギーの問題も出てきます。人と自然は一体のものなので、生態系の攪乱や気候の変動、自然界や地球レベルでの問題も見えてきます。

以下に示す表は、神経伝達物質の生合成に必要な物質と、合成経路です。
★「脳内神経伝達物質」.pdf

  

私は、NHKでタモリさんと山中教授がやっている「人体」という番組のシリーズが好きです。とにかく映像(CG)が、ものすごく綺麗ですね。
「脳」についての第5集は、神経細胞(ニューロン)が映像化されて、ぞくぞくしました。
今までの、白子のようなぶよぶよした脳のイメージとは全然違いますね。

そして、情報伝達の鍵となる、シナプス間隙の様子も映し出されています。
なるほどな〜と思いました。

すみません、NHKさんのCG画像をお借りしました。おー!シナプスです!!超リアル〜♪

  

脳は1千億の細胞をもつ

脳を構成する細胞は、神経細胞(ニューロン)とグリア細胞だ。
ニューロンは「脳の本体」と言ってよく、脳はニューロンを束にしたようなものである。
脳のニューロンの数は1千数百億もある。ニューロンは、核をもつ細胞体と、樹状突起、軸索、ミエリン鞘からなる。樹状突起にはそれぞれ1万ほどのシナプスがある。シナプスは、ニューロンとニューロンのつなぎ目のことだ。様々な情報はニューロンの中では電気信号だが、シナプスを通過する際は、神経伝達物質によって受け渡される化学信号に変換される。
神経伝達物質はおよそ100種類。終末ボタンのシナプス小胞から発せられ受容体(レセプター)の鍵穴のような所に到達し発火する。この神経伝達物質の種類と量によって心の状態が決定すると言われている。
シナプスの隙間は5万分の1ミリ。まさに「5万分の1ミリのドラマ」と言っていいようなことが繰り広げられている。

神経伝達物質は、神経細胞から神経細胞へのメッセージ伝達を担当するメッセンジャーのようなものである。(必要な情報だけ、適切な場所に伝える)情報の整理がつかず、「情報過多」で脳がパンクしたようになるのが、テンカン・発作というものである。

「グリア細胞」は脳に栄養を与え保護するためにある。
アストログリア(星状グリア)は、「バリアー」と呼ばれる「血液脳関門」の主役であり、細胞膜が脂質なので、脂溶性の物質のみを透過させる。有害物質が入ってこないように脳(神経細胞)を守っているのである。

  

5万分の1mmのドラマ

「5万分の1mmのドラマ」私は、脳の中で起きている事柄をこのように表現することがあります。人間の脳は約1000億個のニューロン(神経細胞)によってできています。脳のあらゆる指令、感情や心の動きも生体的に見れば、ニューロンの中を通る電気信号でしかありません。ただ、ニューロンとニューロンは直接繋がっておらず(繋がっていたら、一瞬で脳全体にすべての情報が行き渡るので、情報過多でパンクしてしまいます。てんかん発作のように・・)、シナプスとゆうつなぎ目があり、その隙間が5万分の1mm(20ナノメートル)。その間を約100種類の神経伝達物質が電気信号を化学信号に変換して送り届けているのです。必要な情報を必要な分だけ、必要な場所に届けています。

このメッセージ物質の選択と量によって伝わり方が変わります。(脳には多様性・適応力をもたせる為に多くの選択肢が用意されており、柔軟に働くようにできています)ただし、必要な神経伝達物質(メッセージ物質)に過不足があれば、脳はうまく機能しない可能性があります。想いも気持ちも、認知情報も知性や記憶もうまく伝わらない偏ったものになるのです。

人が人を好きになったり、大きな決断をしたりするとき、何気ない日々の会話や感情のやり取りにも、シナプスの間でメッセージ物質が発信されドラマを生み出しているのです。
ニューロンの数は1000億×樹状突起のシナプスの数は1万×メッセージ物質の種類は100=???(一体いくつの組み合わせがあんだろう?計算できない・・)

人の心や想い

心や想いがどこにあり、どこから来ているかを論じるときは、「霊魂」の存在を含め、まだまだ未知の部分も多いでしょう。しかし、魂も肉体(現実生活)を土台として育まれるとしたら、物質としての「脳」の持つ意味や働きも重要ではないかと思います。心とつながっているのはやはり脳なのです。(受信機なのか?心それ自体なのかは知りませんが・・)脳がちゃんと機能するように、そのコンディションを整えてあげなくてはなりません。

神経伝達物質を体内において生合成する為には、タンパク質やビタミン、ミネラルなど、必須の栄養素が求められます。DNAの指示によってつくられてゆくわけですが、その材料がそろっているのか?ということが重要ポイントになります。そして、神経伝達物質がどのようにシナプスの間を行き来しているのか、種類と量、質が脳の働きを決定づけているのです。

もちろん現実生活の中(体の外側)では、様々な出来事に表向きの原因(きっかけ)があり、関係性があり、個性によって左右されることもあるでしょう。
しかし、感覚や認知に偏りがあり、自分の意志を超えて、コントロールできないようなパニックや切れやすい状態、理由もなく心の状態が不安定な場合、先に示したようなベースとなっている生体的な状態を見直す視点もいるのではないでしょうか・・・

脳について良く学び、その仕組みや機能を知れば、私たちにはまだまだやれることがあるように思います。
ニューラルネットワークの可能性は無限に広がっているのです。

2019.5.12 俊邦父