「5万分の1mmのドラマ」

〜ニューロンと神経伝達物質の働き、そして鍵を握るDNA〜

「5万分の1mmのドラマ」私は、脳の中で起きている事柄をこのように表現することがあります。人間の脳は約1000億個のニューロン(神経細胞)によってできています。脳のあらゆる指令、感情や心の動きも生体的に見れば、ニューロンの中を通る電気信号でしかありません。ただ、ニューロンとニューロンは直接繋がっておらず(繋がっていたら、一瞬で脳全体にすべての情報が行き渡るので、情報過多でパンクしてしまいます。てんかん発作のように・・)、シナプスとゆうつなぎ目があり、その隙間が5万分の1mm(20ナノメートル)。その間を約100種類の神経伝達物質が電気信号を化学信号に変換して送り届けているのです。必要な情報を必要な分だけ、必要な場所に届けています。

このメッセージ物質の選択と量によって伝わり方が変わります。(脳には多様性・適応力をもたせる為に多くの選択肢が用意されており、柔軟に働くようにできています)ただし、必要な神経伝達物質(メッセージ物質)に過不足があれば、脳はうまく機能しない可能性があります。想いも気持ちも、認知情報も知性や記憶もうまく伝わらない偏ったものになるのです。

人が人を好きになったり、大きな決断をしたりするとき、何気ない日々の会話や感情のやり取りにも、シナプスの間でメッセージ物質が発信されドラマを生み出しているのです。
ニューロンの数は1000億×樹状突起のシナプスの数は1万×メッセージ物質の種類は100=???(一体いくつの組み合わせがあんだろう?計算できない・・)

心や想いがどこにあり、どこから来ているかを論じるときは、「霊魂」の存在を含め、まだまだ未知の部分も多いでしょう。しかし、魂も肉体(現実生活)を土台として育まれるとしたら、物質としての「脳」の持つ意味や働きは重要ではないかと思います。心とつながっているのはやはり脳なのです。(受信機なのか?心それ自体なのかも知れませんが・・)
脳がちゃんと機能するように、そのコンディションを整えてあげなくてはなりません。

神経伝達物質を体内において生合成する為には、タンパク質やビタミン、ミネラルなど、必須の栄養素が求められます。DNAの指示によってつくられてゆくわけですが、その材料がそろっているのか?ということが重要ポイントになります。そして、神経伝達物質がどのようにシナプスの間を行き来しているのか、種類と量、質が脳の働きを決定づけているのです。

もちろん現実生活の中(体の外側)では、様々な出来事に表向きの原因(きっかけ)があり、関係性があり、個性によって左右されることもあるでしょう。
しかし、感覚や認知に偏りがあり、自分の意志を超えて、コントロールできないようなパニックや切れやすい状態、理由もなく心の状態が不安定な場合、先に示したようなベースとなっている生体的な状態を見直す視点もいるのではないでしょうか・・・

  

私たちは、子供の脳を割って、脳みその悪いところを確認するような作業はできません。
しかし今の時代、科学によって脳の仕組みは学ぶことができます。DNAの解読も進んできています。脳の機能を左右する、1000億のニューロンの隙間で起きている、神経伝達物質の働きに着目することはできます。そして、人間の脳や伝達物質がどのような栄養素で、どういった経路で生合成されるのかも解明されています。やるべきことはあるのではないかと思うのです。

神経伝達物質(メッセージ物質)は約100種類。その過不足が心(精神)の状態に大きく影響しているのは、ほぼ間違いありません。例えば、心を安定させ、調和をもたらすセロトニンやGABAは、パニックや発作、行動障害にも効果がありそうです。

体内における、メッセージ物質の生合成には、人によって個人差があります。必須アミノ酸を含むタンパク質やビタミン、ミネラルの必要量が異なるのです。
GABAやセロトニンを生合成する為には補酵素として、ビタミンB6や鉄分が必須です。ストレスによってもビタミンの必要量は変わります。

また、栄養素を吸収すべき「腸」の状態も重要です。さらに人体(脳神経)に悪い影響を与える有害物質(農薬などの化学物質)の侵入も考えられます。アレルギーの問題も出てきます。人と自然は一体のものなので、生態系の攪乱や気候の変動、自然界や地球レベルでの問題も見えてきます。

以下に示す表は、神経伝達物質の生合成に必要な物質と、合成経路です。
★「脳内神経伝達物質」.pdf

  

私は、NHKでタモリさんと山中教授がやっている「人体」という番組のシリーズが気になっています。とにかく映像(CG)が、ものすごく綺麗ですね。
「脳」についての第5集は、神経細胞(ニューロン)が映像化されて、ぞくぞくしました。
今までの、白子のようなぶよぶよした脳のイメージとは全然違いますね。

そして、情報伝達の鍵となる、シナプス間隙の様子も映し出されています。
なるほどな〜と思いました。


NHKさんのCG画像をお借りしました。おー!シナプスです!!超リアル〜♪

そして今度、2019年「令和元年」5月5日に、新シリーズ「人体U」で遺伝子(DNA)について放映されます。DNAを解読し、人体の仕組みを知ることは、「障害」の根本的な理解と解決に繋がってゆくと考えています。
知るべきことを知り、なすべきことをなした後に、療育の基本である「人」としての関係性を重視した、愛情あふれる細やかな子育てをしてゆけばいいのです。

  

さあ、来ました。5月5日と12日に放映された人体U「遺伝子」です。
DNAすごいぞ!!
二重螺旋構造のリアルなCGや、DNAからの指令がどのように伝わるのか、遺伝子「設計図」の運用の仕方など、恐ろしいほどに精巧に描写されていました。
石原さとみさんと鈴木亮平さんのDNA解析もおもしろかったです。
顔かたちや耳たぶの大きさ、ハゲになりにくいとか、そこまでわかるのかと・・・

人体の設計図としての「遺伝子」。そして、これまで何の意味も持たないと思われていた残りの98%のジャンクDNA、そこに宝物が隠されているというのです。
長寿や病気から体を守るDNA、個性や体質に至るまで、多くのことがこのゴミの山の中に隠れていたのです。きっと、障害に関する治療の鍵もそこに潜んでいることでしょう。私たちの細胞一つひとつの中に「トレジャーDNA」がたくさん眠っているのかもしれません。
DNAの解析が進むにつれ、健康や福祉に対する考え方や、「障害」への取り組み方も、この先10年くらいでガラッと変わっていく可能性があります。

本当の意味での、個人差や個性、人権などが、分子レベル(DNA)でとらえられてゆく時代になるのだなあと思います。「栄養学」も(DNAに基づく)分子レベル、健康管理も分子レベルで、障害者への療育も分子レベルで考える日が来るのかもしれません。

12日放送分の人体U「遺伝子」は、任○堂スイッチではなくして“DNAスイッチ”(ブームになりそうですね)について語られます。きっと、発達障害に関するスイッチも、遺伝子の中のどこかに隠れているような気がします。設計図と栄養素を取り揃えることができたなら、本来の自分(子供たちの姿)を取り戻すことができるかもしれません・・・
すでに、ガンの治療ではスイッチを切り替える薬が開発されつつあります。人は、DNAのスイッチを切り替えることによって、宇宙にさえ適応してゆこうとしています。DNAには、まだまだ多くの可能性と神秘が残されているようです。
運命は変えられるかもしれません。

自閉症の治療プロトコルで高名な、
Dr. Amy Yaskoさんは、「遺伝子に話しかけなさい」と言う。(それは祈りかもしれません)
意識すれば、その想いは神とDNAに通じるのでしょう。
さあ、あなたはどうやって、何を語りかけますか?

2019.5.12 俊邦父