脳の栄養と発達

ニューロンと神経伝達物質の働き

私には疑問がある。
自閉症(発達障害)や知的障害の多くは、脳の障害であると言われている。ならば、その障害に関わっている人たちは、どうしてもっと脳について学ぼうとしないのか?
また、脳を形成し、その働きをサポートするために必要な「栄養素」(栄養学)について学ぼうとしないのか?さらに、その栄養素に分子レベルで指示を出し、代謝や臓器形成の基となっている「設計図」であるDNAの情報について目を向けようとしないのか?
表面的な現象や、接し方、環境に関することばかり気にしている。
脳が何でできていて、そこで働く神経伝達物質がどうゆうものなのか、どんな働きをするのか?
なにが足らないのか・・・そういったことを学ばなくてはいけない。

医者は薬を出すことはあっても、人の体や脳を作ることはない。
それに一番近いのは、栄養であり、栄養学であり、指示を与えている遺伝子(DNA)である。栄養が体を作り、その土台の上に、さまざまな精神活動がある。そしてその活動自体も栄養があってこそ成せる技なのである。栄養が体を作る。だからそれを個別に適した、ベストなコンディション(配合)で与える。

脳が飢えている時は、まず脳に必要な栄養素を与えることが第一。
その為には、症状を抑え込むための薬ではなく、本当に必要な「栄養素」を含むサプリメントを摂取することが効果的。

「栄養障害」には ← 栄養療法が効果的

飢えた人には、気持ちや言葉かけや関係性を言う前に、まずしっかりと食べさせて、栄養を十分に取り、落ち着いてからゆっくりと話を聞けばいい。

もう一つ、私がずっと違和感を覚えていることがある、「発達障害」という言葉(名前)だ。
「発達障害」と言うのは、なにかはっきりしない、曖昧な言葉だ。
どこの何の発達に障害があるというのか?
はっきりと、「脳の発達」に障害があると言えば、問題はもっとクリアーになり、具体的な対応を考えるようになるだろう。
どうして、脳はうまく発達しなかったのか?
何に問題があるのか?(何が足らなかったのか)。
脳の発達に必要なものは、具体的に何か?
脳の形成・発達に必要なもの。生体の成長に必要なものは、まずもって栄養素である。
ならば、まず「栄養学」から学んでゆこうということになる。
はっきりと「脳神経系発達障害」と言えばいいのに。(他にも要因があるのかもしれないが・・)
そうしたら、脳の発達に必要なものは何かと、具体的に考えるに違いない。
DNAや栄養学について学んでいくだろう。

「発達障害」という漠然とした、中途半端な名前。⇒ 課題の明確化・脳の栄養学へ

さらに遡って、設計図に問題があるとするならば、DNA(遺伝について)を調べなくてはならない。根本における障害の問題点はそこにあるのだろう。
ただし、親から引き継いだもの、持って生まれたことは個性だ、ということで遺伝子(DNA)に触れることには抵抗がある場合、私たちがまず取り組むべきことは、「栄養」についてである。
その次には、「育て方」(心や関係性、教育など)
そしてその次が、「環境」と言うことになる。

  1. 生体に関する栄養学的な取り組み(栄養療法)。バイオメディカル療法。
    自分の体の、内なる問題(体自体)=「栄養」、から取り組んでいかなくてはいけない。それが、土台である。

  2. 人との関係(母子関係)、育て方、心の問題、教育など。

  3. 環境。視覚支援やコミュニケーションツール。物理的構造化やスケジュール、手順書など。障害特性に合わせて、住みやすく、わかりやすい環境を整える。

  4. 社会とのつながりや貢献。生き甲斐など。行動理論に基づいたABA。スキルの取得。
    SSTや就労支援などが関わってくる。

脳の発達に必要なものは?
言葉かけかな、関係性かな、教育かな・・・どれも大切なことではあるけれども、まずは、脳を形作っているその働きを支えている、十分な「栄養素」でしょ。必須の材料がなければ、正しく機能しなくなる。だから、「栄養学」を学びましょう。

脳は1千億の細胞をもつ

脳を構成する細胞は、神経細胞(ニューロン)とグリア細胞だ。
ニューロンは「脳の本体」と言ってよく、脳はニューロンを束にしたようなものである。
脳のニューロンの数は1千数百億もある。ニューロンは、核をもつ細胞体と、樹状突起、軸索、ミエリン鞘からなる。樹状突起にはそれぞれ1万ほどのシナプスがある。シナプスは、ニューロンとニューロンのつなぎ目のことだ。様々な情報はニューロンの中では電気信号だが、シナプスを通過する際は、神経伝達物質によって受け渡される化学信号に変換される。
神経伝達物質はおよそ100種類。終末ボタンのシナプス小胞から発せられ受容体(レセプター)の鍵穴のような所に到達し発火する。この神経伝達物質の種類と量によって心の状態が決定すると言われている。
シナプスの隙間は5万分の1ミリ。まさに「5万分の1ミリのドラマ」と言っていいようなことが繰り広げられている。

神経伝達物質は、神経細胞から神経細胞へのメッセージ伝達を担当するメッセンジャーのようなものである。(必要な情報だけ、適切な場所に伝える)情報の整理がつかず、「情報過多」で脳がパンクしたようになるのが、テンカン・発作というものである。

「グリア細胞」は脳に栄養を与え保護するためにある。
アストログリア(星状グリア)は、「バリアー」と呼ばれる「血液脳関門」の主役であり、細胞膜が脂質なので、脂溶性の物質のみを透過させる。有害物質が入ってこないように脳(神経細胞)を守っているのである。

「代謝」について

「代謝」とは、生体がDNAの指令によって行う化学反応のことだが、これは、まずDNAが解読されて酵素タンパクが作られ、これにビタミンやミネラルが結合して起こる現象である。
たとえば、脳内神経伝達物質の一つであるセロトニンは、トリプトファンという必須アミノ酸を材料とし、生合成には補酵素としてビタミンB6がなくてはならない。その際、「確率的親和力」が問題となる。確率的親和力とは、酵素と協同因子(ビタミン)との結合のしやすさを表す言葉である。

知的障害が、神経伝達物質を作る酵素とビタミンとの親和力が極端に低いことから来ている場合があるという説もある。

ビタミンB群は“代謝ビタミン”と呼ばれている。生体内のいろんな化学反応に関与している。代謝をスムーズに進めるためにも、しっかり摂取しておこう。
「セロトニン」はうつやパニック、発達障害などの治療に大きくかかわる神経伝達物質である。ノルアドレナリンやドーパミンの活動を調節し、不安感をなくし、精神を安定させ、落ち着かせる作用がある。思考の柔軟性や協調性にも影響する。
また、セロトニンからは“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンが合成され、脳の興奮を鎮め眠りへと誘う。睡眠中に分泌されるメラトニンには抗酸化作用があり、抗ガン作用もあるそうだ。

脳はニューロンの集まり。そのニューロンはタンパク質でできている。
脳細胞のタンパク質の代謝回転の半交代期は、2週間だという。脳はどんどん生まれ変わっている。必須栄養素が重要であるということは推測できるだろう。

代謝回転は、「遺伝子」=DNAの設計図に基づいて行われる。DNAは二重螺旋構造をしており、梯子状のステップがあり、30億ビットの記録装置がついている。恐ろしく精巧なものだ。
DNAに狂いが生じないことを願うばかりだ。

三石巌先生がお勧めする、頭をよくする『知能ビタミン』

ビタミンB1B2B6B12CH、ニコチン酸、パントテン酸、コリン(レシチン)
ミネラルでは、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムである。

それぞれの欠乏では、次のような症状が現れる。
ビタミンB1 → エネルギーが不足し、怒りっぽくなる。記憶力の低下、音の刺激に過敏になる。
ビタミンB2 → うつ状態になる。
ビタミンB6 → 暴力を含む異常行動があらわれる。
ビタミンB12 → 集中力の低下、記憶力の減退、知覚障害などが現れる。
ニコチン酸 → 不安感やいらだちが現れ、怒りっぽくなり、不眠の傾向も現れる。
パントテン酸 → 知能が低下する。
ビタミンC → 知能が低下する。
ビタミンH(ビオチン)→ うつ状態や幻覚が現れる。

ここにあげたビタミンが一つでも欠乏すれば賢脳はありえない。賢脳も健康も土台にあるのは物質(栄養物質)である。脳の実体は物質だ。これが働くためには、物質の補給がなければならない。
(三石巌 著「賢脳食」より引用)

知的障害児に対するビタミン療法

レシチン
自閉症で多動の男の子にレシチンを与えると、おとなしく授業を受けるようになったという。
神経伝達物質の一つにアセチルコリンがある。知覚神経と運動神経、および副交感神経の伝達物質として知られており、知能とも関係が深い。レシチンは、ビタミンの一種であるコリンを含む脂質なので、アセチルコリンの生成に役立つ。卵黄や大豆にレシチンは含まれている。

福祉の現場においては、「対人サービス」ということで、利用者さんへの接し方や関係性、作業内容、障害特性に配慮した環境づくりなどが重視される。でもやはり、発達障害や二次的な精神障害との合併など、難しいことはたくさんあり、保護者や支援者も疲弊している場合がある。
そんな時には、少し視点を変えて「栄養」のことなど考えてみてはどうだろう・・・

「腫物」に触るような、ぴりぴり、ハラハラした不自然な接し方。
それならば、まず腫物自体を治す(腫れが引くような手筈をする)ことを考えてみてはどうだろう? 腫れが引けば、普通に(気を使いすぎないで)接しても大丈夫。
そうすればもっと自然に接することができるようになると思う。

ビタミン剤を飲んで、心が落ち着き、協調性や柔軟性が出てきたらどんなにいいだろう。
2019年、今年は「栄養学」について学び、実践する年にする。
『脳の栄養学』・・・分子栄養学に理論的な基礎(根拠)を置き、オーソモレキュラーや遺伝子科学、生命医学など、バイオメディカル療法に着目する。
さまざまな症例や当事者・保護者の体験や工夫をおりまぜながらページを進めていく。

Fe(鉄)やN(窒素)は地球環境にもつながる話しである。
栄養療法で元気を取り戻したなら、今度は私たちの活動として、栄養学で得た知識を発展させ、環境活動へとつなげていくこともおもしろい。

2019.3.30 俊邦父



※ 上記の内容は、関連書籍を参考に著者の私見をまとめたものです。(人によっては見解が異なることがあります)障害には違いがあり、人の体にも個体差がありますので、結果は異なることもあります。ご自身で勉強し納得した上で、自己責任においてご活用いただければと思います。

 参考にさせていただいた、「分子栄養学」とオーソモレキュラーの本のリストです。