本の紹介

福祉と森林と農園に関する好きな本を集めてみました。
『天真爛漫』はこれらの本を参考にしながら作られています。

【福祉の本】

「母よ嘆くなかれ」 
パール・バック 著 松岡久子 訳  法政大学出版局

初版は1950年10月25日です。自閉症ではありませんが、フェニルケトン尿症により重篤な知的障害を負った愛娘キャロルのことを綴った母パール・バックの書。今は絶版になっているのですが、松岡さんの訳著が欲しくて、ネットで古書を探しまわり、ようやく見つけました。
障害児の母親の心をこの本ほど如実に表した本は他にありません。療育や福祉、子育ての原点になるような本です。私は他のどの本よりも、この本に共感し励まされました。

※パール・バックに関する詳しい情報はこちらをご覧下さい。

「精神科医の子育て論」 
服部祥子 著  新潮選書

自閉症児T君の成長と元小児科医の母J子さんの子育ての姿を、精神科医である服部先生が詳しく紹介している本です。1991年に発行された古い本ではありますが、その内容は素晴らしいものです。「自閉症児を育てる」とはどういうことかがわかり、その覚悟や決意を正すことのできる本です。この本で「基礎」を身につけ、その上で新しいテクニックを学んでゆけば良いかと思います。
河島淳子さんが指導されている「トモニ療育センター」推薦の一冊です。

「生きがいについて」 
神谷美恵子 著  みすず書房

ハンセン病患者の看護にあたった精神科医の神谷美恵子氏は、青年期に結核にかかり、軽井沢で療養生活を送った経験がある。本の中で「自然こそ人を生み出した母胎であり、いついかなる時でも傷ついている人を迎え、慰め、癒すものであった。(中略)少なくとも、深い悩みの中にある人は、どんな書物によるよりも、どんな人の言葉によるよりも、自然の中に素直に身を投げ出すことによって、自然の持つ癒しの力−それは彼の内にも外にもはたらいている−によって癒され、新しい力を恢復するのである。」と語っている。

「アラスカ物語」 
新田次郎 著  新潮社

20代の頃、よく読みました。明治元年から昭和33年まで生きた、フランク安田の物語。
北極光の雪原を彷徨い、アラスカに移住し、エスキモーの妻ネビロとともに、当時欧米諸国のクジラの乱獲により絶滅に瀕していた沿岸エスキモーを導き、ユーコン川のほとりビーバー村にエスキモーの新天地を開いた人物。ジャパニーズ・モーゼと謳われ、アラスカのサンタクロースと呼ばれたほど人が良かったフランク安田の90年の生涯を綴った本。

【森林の本】
日本人の心の中には、森林が生きています。
森の中にいるとき、人は癒され、自然の中に帰ってゆくことができます。
人と自然は、本来一つのものだったんですね。

「十六の話し」
司馬遼太郎 著  中公文庫

16の短編がおさめられています。
その中で、「樹木と人」という話しは、森林と人との関係、緑がなくなれば人間は生きてゆけない、ということを語られています。文明が栄えて、人口が増え、森林を伐り開いて畑にし、そのうちに土地が乾いて不毛の荒れ地となり、人が住めなくなる。人間の歴史を語ってきた著者が、「緑が全ての基礎であり、地球の緑さえ守ってゆけば、我々にも未来がある」と訴えられた、大切な話しです。

最後に載せられている「21世紀に生きる君たちへ」は司馬さんの遺言と言っていい文章です。その中においても「自然へのすなおな態度こそ、21世紀への希望であり、君たちへの期待である」と述べられています。

「森の文化史」
只木良也 著  講談社学術文庫

この本の原本「森の文化史」は、1981年に出版されました。日本の自然の代表である森林を理解しながら、その恩恵を受ける人間の生活・活動、その過去と現在を考えようとする本です。
只木先生は森林の歴史、造林学、森林生態学に詳しく、書かれている内容はとても奥が深いです。数値化できない森林の本当の価値を強調され、環境学や森のエコシステムについても語られています。
森林をガイドする者としては、必ず読んでおくべき本の一つだと思います。

「樹 海」
高橋延清 著  世界文化社

尊敬する「どろ亀先生」の代表作です。今はなき高橋延清先生は、北海道富良野にある東京大学北海道演習林=「樹海」の林長をしておられました。終生、森を愛し、森とともに生き、森を育ててこられました。森の声を聞きながら、森の生態にあった林業「林分施業法」を確立・実践し「理想の森」を求めてゆかれました。
東大名誉教授であられながら、大学の教壇から講義をされたことは一度もなく、先生の講義はいつも森の中で行なわれたそうです。子どものような純真な心をもたれ、自然とともに生きた先生でした。

「森に遊ぶ」
高橋延清 著  朝日新聞社

「どろ亀さん」は、1974年退官となった。その後、札幌近郊にあるテイネ山ふもとに山小屋を建てられた。カラマツの木でつくった「夢の山小屋」だ。子どものようになったと言う先生は、晩年その小屋でたくさんの出筆をされた。一人暮らしで、自然と語り合いながら過ごされた。木々も鳥も動物も昆虫も、みんな先生の友達だった。
そんな先生のたくさんのエッセーがのせられているのがこの本である。



「森をつくる」
C・Wニコル 著  講談社

20年ほど前、NHKのEテレで、人間講座というものがあり、C・Wニコルさんが講師で「森から未来を見る」とうテーマで、8回シリーズで話されたことがあります。私はテレビにかじりつきで観ていました。ニコルさんは日本の森を愛し、黒姫山に移り住んで、荒れ果てた放置林を買い取り、明るく生き物あふれる豊かな森「アファン」へと生まれ変わらせました。「森づくりは、未来を信じることだ」と言われます。
震災の後も、傷ついた子供たちをアファンの森に招待したり、森の学校を建てたりされました。日本を愛し、日本人として亡くなられました。私の尊敬する、あこがれの人です。

「森は生きている」
富山和子 著  講談社 青い鳥文庫

子供向けにわかりやすく書かれた森林についての本ですが、大人が読んでも充分納得のいく内容です。
わたしたちのまわりには、森林のおくりものがいっぱいです。本、えんぴつ、ノート、机やピアノ。それだけではありません。森林の緑と、川の水と大地の土はひとつにつながっているのです・・・・
この本はシリーズで「川は生きている」「道は生きている」とつづいています。

「水と緑と土」
富山和子 著  中公新書

富山和子先生は、日本のレイチェル・カーソンと呼ばれ、環境問題の第一線で活躍してこられ、「土壌の生産力こそ真の資源であり、それを失った文明は必ず滅亡する。」と警鐘を鳴らしてこられた方です。
「水と緑と土は同義語である」と唱え、「森林は土壌の形成者であり、水は森林によって確保される。」と教えられます。農林漁業に関係する人にとっては必読の本だと思います。

「鎮守の森」
宮脇昭 著  新潮文庫

宮脇先生は、「ふるさとの木による、ふるさとの森」を合言葉に、世界中に植樹をしてこられた方である。
「鎮守の森」よりヒントを得て、潜在自然植生の顕在化された森をめざし、失われつつある照葉樹林を再生し、各地に防災林・環境保全林を築き上げてこられた。イオンや新日鉄などの企業の森も、先生の指導によるものである。日本人で唯一、ブループラネット賞を受賞された。この本はその原点と言える書である。

農園の本は、「しあわせ農園」の本のコーナーにあります。


印は俊邦父が個人的に特に好きな本です。




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